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「やあ◇」

「どーも」

「会っちゃったね◆」

「ん?何が?」

「……◇ヨークシンで会わないことを、って言ってたアレ◆ひょっとして忘れてた?」

「えーと……あ。そんなこと言ってたな確かに」

「…………◇」

「…………」

「抜け出さないんだね◇」

「そうだな」

「彼らのところに戻りたくはないのかい?」

「いいや……。それより、あいつが何故私を呼んだ、いや連れてこようとしたのかはっきりさせておきたいんだ」

「ふうん……はっきり、ねえ◆」

「…………」

「…………」

「…………」

「別に本当のことを話せなんていうつもりはないけど◇」

「悪い、嘘だ今の」

「変わり身早いねえ◆」

「決断力があるって言ってくれ。……本当は、顔も見たくないはずなんだけどな」

「…………」

「憎くて仕方なくて、殺したいはずなんだ。なのに―――会いたいなんて思ってる」

「……。うん◆」

「馬鹿だな私は。時間を置いたって、あいつらを許せる訳がないのに。……こんなんじゃ合わせる顔ねーな……」

「……◇」

「……あー、ごめん。今のでっかい独り言ってことで流しといて」

「いいよ、別に◇」

「ってなんで頭撫でんだよ。手どけて……、……いや、やっぱそのままで」

「うん◇」



□□□□



9月3日、夜。
ヒソカを除いた幻影旅団員、計8名はセメタリービルに集結しようとしていた。
派手に轟音を響かせ、道に立ち塞がる“障害物”を徹底的に排除し、死体と血液をその跡に残しながら、彼らは団長、クロロの元へと向かった。

「本当に大丈夫かなあ?」

「ルーシャのこと?認めたくはないけど、ヒソカが見張ってるんだからまず大丈夫でしょう」

「いや、だから心配なんだって。あいつルーシャの実力感じ取って殺しにかかるんじゃないかってさ」

「……その可能性は有るわね」

「だろ?」

「だけどルーシャだって簡単にやられるほど弱くはないし、ヒソカだって流石にところ構わず手を出すような節操なしでもないわよ」

「本当かな……」

ばたばたと人形のように倒れ伏していくマフィアの黒服たち。断末魔の声があちらこちらで聞こえるその中で、普段と変わらぬ口調でシャルナークとパクノダは言葉を交わしていた。

「オレたちが帰るまで無事だといいけど」

「死ぬ前提で話を進めないでよ。……さて、そろそろ見えてきたわ」

セメタリービル、正面玄関。ところ構わず沸き出す虫のごとく、黒服たちは向かってくる。飽きずに銃を乱射する男たちに来なさった、と呟いて、シャルナークは動く。その後ろからパクノダが続いた。

同時刻、セメタリービルから約100メートル離れた場所。

「2時の方向に6人、そこから10時の方向に8人」

「了解」

短い言葉だけを残して、マチは指先から発する糸状のオーラを蠢かせた。
細身の割に力のある彼女は、片腕だけで木々に引っかけた糸を張る。それと同時にマフィアの黒服たちは宙へと浮き、細い糸は彼らの首を締め上げた。
首吊りの死体は糸に操られ、持っていたマシンガンをまだ生きている黒服たちに向けて乱射する。数秒後、土煙が晴れたそこに動く者は一人としていなかった。
糸を回収した彼女は、上から監視役をしていたボノレノフの所へ一旦戻る。

「どう?」

「周りには動くものなし。先に進むぞ」

そこから更に約100メートル離れた林道の中。街頭もない暗い路面に、その闇の中でもわかる真っ黒な影が大量に横たわっていた。

「誰からだ?」

「団長からだたよ。セメタリービルで暴れるから来い言てるね」

「実はもうすぐそこまで来てるけどな」

最後の黒服の息の根を止め、フィンクスは肩をほぐした。視線の先にはそびえ立つ黒い影、セメタリービル。あちらこちらで銃声が聞こえているため、大方他の団員たちも心置きなく暴れているのだろうと彼は推測した。

「あと、団長が珍しく暴れ方に条件つけたね」

「なんて?」

団長からの電話をとったフェイタンは、フィンクスの方に振り返りにやりとした笑みを向ける。これから行う、否、行っている虐殺行為自体を楽しむ彼のいつもの顔だ。それがより一層嬉しそうに歪む。切れ長の目をさらに細めて彼は言った。

「“派手に殺れ”てね」

それより少し後、セメタリービル内。

「……そうか、見つかったか」

電話口でそういった男は、誰一人いない部屋で口許を緩めた。
眼下には外灯やネオンの数々が灯るきらびやかな街、ヨークシン。しかしそこから響き渡るのは悲鳴と爆音、そしていくつもの銃声。騒々しいその音を楽しみながら、男―――クロロは静かに目を閉じた。

(三年ぶり、か)

頭の中で思いを馳せて、彼は指揮をふるった。蜘蛛の足たちは亡くした者の鎮魂歌を歌いながら、頭の元へと集う。

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