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「あ!ルーシャ起きてる!」

「ルーシャ先輩!」

「ルー姉……!」

誰かが入ってくる声にちらりと入口に視線を向ける。ゴン、キルア、ズシにウイング。いつも一緒にいた馴染みの顔を認め、ルーシャは気弱に微笑んだ。

「あ、さっきぶりー……悪いな、あんな試合見せて」

「…………」

「ううん、許さない!」

……………………は?

と、唐突なその台詞に他の四人は唖然とした。声の主、ゴンはつかつかとルーシャのベッドの前まで来て、膨れっ面で彼女を睨んだ。

「なんであんな無茶するのさ!いくらなんでもヒソカ相手にまともな防御なしで挑むなんて無謀すぎるよ!!もっと自分の身体を大切に―――え?痛ァッ!!」

途中で途切れた言葉は短い悲鳴へと変わった。無言で彼の隣まで歩み寄ってきたキルアが静かに、しかしかなりの力でゴンの頭に拳骨を落としたからである。がつん、と痛々しい音が響き、それを受けた当人は痛みに部屋の床を転げ回った。

「いぃぃ、ったぁぁ〜〜〜!!何するのさキルア!!」

「何が“何するのさ”だァ!?お前自分のこと棚に上げてよくそんなこと言えたもんだな、あ゛!?」

「何だよ自分のことって!!」

「半年前の200階での初戦のこと、忘れたとは言わせねーぞ!!」

「あ…………」

言葉の勢いは直ぐに衰えた。そういえば…と冷や汗を書きながら目を反らすゴンを半ば呆れ顔で眺めたキルアは、思わず頭を抱えて溜め息をついた。
しかし不満げに頬を膨らませた彼は、納得いかない、というように尚も反論を続ける。

「オレも人の事言えないけど、でも悪いことは悪い!!」

「まだ言うか!確かに間違ってねーけどお前が言って良いことじゃねーよ!!」

「悪いことを悪いって言ってなにがダメなのさ!!」

「あ゛ぁーーー!?」

「ぶっ……!あははははは!!」

目の前の二人のやり取りに吹き出したのは話題の中心であったルーシャだった。時折怪我が痛むのか顔を歪めながらも、口元に浮かぶのは楽しげな笑み。
肩を震わせながら笑う彼女をぽかんと見ていた二人だったが、その顔に安心したのか、ヒートアップしていた口喧嘩はとりあえず収まった。

「お前ら見てるとホントに面白いな……!ふ、ふふふ」

「……んだよ、馬鹿にしてんじゃねーだろな」

「満更でもない顔が可愛いぞキルア」

「ばっ……!うっせーよ!!」

「キルアさん顔赤いっすよ」

あはは……と和やかな空気がルーシャのいる部屋に流れた。すっかり笑顔を取り戻したゴンとそれ以外の三人。しかしその雰囲気を唐突に絶ちきった人物が一人いた。

「笑っている場合ではありません」

「ははは……、へ?」

厳しい声を上げたのはウイング。ゴンを叱った時と同じように、刺々しいオーラを感じたルーシャは静かに冷や汗を流す。その場にいた他三人も、空気の変化を感じ取り静かになった。

「ゴン君の言っていることは確かです。あなたはもう少し自分の身体のこと、相手の力量、しっかり考慮して冷静になるべきだった」

「……、はい」

「しかし、あなたは私の弟子ではない。私があれこれ言う資格はありません」

「……………」

「ですから、このことはしっかりルーシャさんの師匠にたしなめて頂くようにお願いしておきました」

「…………へ?」

師匠、の単語に顔をひきつらせたルーシャ。数秒立った後、元々青白い肌が更に蒼白になる。ま、まままま……と言葉にならない声が口から漏れた。

「まままさか……」

「ええ、そろそろ連絡がくる頃でしょう。ネテロ会長によろしくお伝え下さい」

「うう、ウイングさん鬼畜すぎだぁぁぁーーーーー!!!」

いつも穏やかな彼が浮かべたその時の笑みは、それはそれは素晴らしく綺麗な笑顔だったという。

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