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ヒソカとの試合を控えたその前日、ゴンとキルアは修行の成果を見せるため、ウイングの宿にいた。後ろには彼らに付き合う形でついてきたルーシャの姿も。
まずはゴンが、グラスに手をかざし練をする。4週間前とは違い、水がわきだす量は格段に増えていた。グラスから溢れ落ちた水があっという間にテーブルを濡らしていく。2週間前にルーシャが見た時より更に勢いを増しているそれを見て、三人は歓声をあげた。

「「おお!!」」

「スゲー勢いだぜ!!」

「…よろしいでしょう。次はキルア君」

「おう」

同じようにしてキルアも練をする。見た目に変化がないため練の間は良くわからないが、しばらくしてキルアのいいぜ、との声と同時に全員が指に水をとり、味を確かめた。

「すごく甘い!!ハチミツみたいだよ!!」

「まったく……たいしたものです」

ウイングに出会って、約半年。この僅かな期間に基本の四大行を完全に習得した彼らのその成果にウイングは感嘆の息を吐いた。ルーシャも同じく冷や汗を流しながら二人の後ろ姿を眺める。

(この調子じゃすぐに追い付かれそうな気がするな…。私もしっかり修行し直さないと)

「二人とも、今日で卒業です。――――そしてゴン君。裏ハンター試験合格!おめでとう!」

「「え?」」

裏ハンター試験?と二人は目を瞬かせる。聞いたこともない言葉に驚く彼らに補足するため、ウイングは話しはじめた。

「念法の会得は、ハンターになるための最低条件。何故ならハンターには“相応の強さ”が求められるからです」

邪な密猟者や略奪を業とする犯罪者を捕えることは、ハンターの基本活動。そうなると犯罪抑止力としての“強さ”がハンターにはどうしても必要となる。
そこでウイングの言葉をルーシャが引き継いだ。

「でも悪用されれば恐ろしい破壊力になるこの能力。公に試験として条件化するのは危険なんだ。だから表の試験に合格した者だけを試すってことになってるわけ」

「じゃあもしかして…」

「もしかしなくても……最初からオレたちに念を教えるつもりだったとか? 」

「ええ。『やる』と言ってくれれば」

「私も試験中は念を使ってなかったんだぞ。試験合格者以外にできるだけ念の存在は教えるべきじゃないからな」

そういうことかー、とゴンは納得した表情で頷いた。ウィングはキルアに視線を向け、続けて言う。

「キルア君。ぜひもう一度試験を受けて下さい。今の君には十分資格がありますよ。私が保証します」

気が向いたら、とキルアはウィングの言葉に素っ気なく返した。素直じゃねェなー、と苦笑するルーシャに反発して肘で小突いてくるキルアを受け流しながら、あ、と彼女は何かを思いついたようにウイングを見た。

「ウイングさん、他の人達が今どんなか聞いてます?師匠とは連絡取り合ってるんですよね?」

「ええ。ハンゾーとクラピカは、別の師範の下、すでに念を会得しました」

「!」

「イルミとヒソカ、ルーシャさんは初めから条件を満たしています。レオリオは、医大試験受験後に修行を開始するようです。ポックルは『練』の習得にかなり手こずってるようですね」

「みんながんばってるんだね!」

「だな」

顔をひきつらせたルーシャと対照的に二人は顔を見合わせ軽くそう言った。彼らは自分の行なってきたことがどれだけ凄いことなのかがいまいちわかっていないようだ。

(ハンゾーといいクラピカといい……今年の試験合格者覚え早すぎじゃね?)

今年は特別ルーキーの数も多かったがハンターとしての資質を兼ね備えていた者も多かったらしい。ますますルーシャがやる気を出し始めたのと同時に、ウイングが最後に忠告をして話を締めくくった。

「最後に一つ忠告です。
明日の試合、くれぐれもムリをしないように!! 」

「はい!」

そのまま別れそうになったその場の雰囲気を感じ取ったルーシャは、言い忘れたことがあったのを思い出して帰りかけた二人を呼び止めた。

「あ、ちょっと待て二人とも。いうの忘れてた」

「んだよルー姉?」

「私1週間後ヒソカと試合」

「「……はぁーーー!?」」

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