![]() 「ナマエよ、風邪をひいたようだが具合はどうかね?」 「ああ、シャカ。カミュが冷やしてくれてるからだいぶ楽だよ、ありがと。」 それを聞いて安心したかのように口角を上げたシャカだったが、次の瞬間にはいつものシャカに戻っていた。 「ふむ、それは結構。しかし、体調を崩すなどナマエらしくないではないか。気でも緩んでいたのではないのかね?」 「はは…っ、耳の痛い話だ。聖域の復興も近代化も進んできたから確かに気は緩んでいたかな。」 力無く笑いながらそう言ったナマエに、私は空いている左手でナマエの髪を撫でた。 そんな行動に目を丸くしていたナマエに、私が考えていた事と同じ事をカノンが話し始めた。 「…ったく、お前は一人で背負いすぎるのだ。確かに我々はお前からすればまだヒヨッコだろう。だが、もう一人ではないのだ。」 「うむ、私達だってナマエの力になるくらいの事は出来るのだからな。」 ナマエを撫でながら私もカノンに続くと、ナマエは我々を見回した。 カノンはいつも通りニヤリとした笑みを浮かべ、シャカもまたいつもと同じように瞳を閉じてはいるが、ほんの少しだけ口元が弧を描いている。 ナマエとシオン様と老師は、我々からすれば気の遠くなるような長い年月を各々が一人で過ごしてきているのだが、以前シオン様が『ナマエは昔から一人で抱え込もうとするところがあるのだ。せめて私や童虎くらいには頼ってもよかろうに…』と言っていたのを思い出した。 私達にとって彼女は確かに黄金聖闘士としての先輩であるナマエは、我々には弱いところは見せたくないのかもしれない。 だが、それでも少し位は頼って欲しいと思うのは……男としてやむを得ない事ではないだろうか。 ……そう思っているのは私だけではないのだろうけど。 その後、ナマエのもとには黄金聖闘士達が入れ代わり立ち代わりやって来てしまい、このままでは休まらないと言ったナマエが、事もあろうにベッドの中からスカーレットニードルを放とうとした為、最初に看病を申し出た私とカノン以外は入室禁止となったのだった。 役得とはまさにこの事 ![]() |