『おれの愛する息子は無事なんだろうな…!!』

『エース!迎えに来た!じいちゃん、エースを返してもらうかんねっ!!』



白ひげの横で、精一杯の声を張り上げてそう告げると、アンも他の海賊達も一斉に甲板から飛び降りていった。
それからしばらくすると、今度は空から軍艦と人が真っ逆さまに落ちてきた!
……何か、頭だけが異常にデカいヤツがいるのはスルーしておこう……。
……恰好からしておかしすぎんだろ。











話を戻して。

落ちてきたのは、アン達の弟とか言っていた少年と、ソイツなりに兄貴を助けるために侵入した監獄から脱獄してきたメンバーらしい。
変なヤツらが大勢いた。
葉巻をくわえた、顔に大きな傷のある偉そうな男は砂になっていたし、ソイツの従者なのか分からん坊主は、身体中が刃物になるようなヤツだったし、何よりアンの弟はゴム人間で手足を伸ばして一度に大勢の海軍を倒していた。


地獄絵図のような戦場だったが、その局面を打破したのはアンの弟─ルフィ─とアンだった。


海軍の三人の大将はそれぞれが能力を持っていて、氷と光、それにマグマだった。
ソイツらの強さは圧倒的で、何度もやられながらもアン達も立ち上がって向かっていったし、白ひげも味方のはずの男に刺されつつも薙刀を一閃しただけで数十名の海兵を吹き飛ばしたり、彼の能力である地震を利用した攻撃で次々と倒すも、大将にやられ膝をついてしまった。



そんな中、仲間達の協力あってアンとルフィはエースのいる処刑台へ掛けられた道を走っていると、一人の屈強そうな老人が立ちふさがった。
それはアン達の祖父で、自分を倒して通れと吼えて拳を振り上げるが、彼はそれを振る事は出来ず、孫の一撃を食らって地面に直撃。
そして傷だらけのアン達は、兄のもとに辿り着いて鍵を外そうとするが、そばに立っていた元帥がなんと大仏に変身して処刑台が崩れ落ちて、アン達に向けて砲弾が撃ち込まれたのだ!
しかし、爆発の中『ボッ!』と言う音と共に炎が噴き出してから空洞が出来て、その中からなんと手錠の外されたエースとアン達が現れた。



そう言えば、もともとはエースの能力だったとアンは言っていたが、それはこの事だったのだな。







それから逃走を図ろうとする一同だったが、自身の死期を悟ったのであろう白ひげが『最期の船長命令』として、全員生きて脱出しろと告げたのだ。
その言葉にエースとアンは立ち止まって、彼に向かって感謝の意を表すためか膝をついて頭を下げた。





『言葉はいらねェぞ。一つ聞かせろ、エース…アン。おれがオヤジで良かったか?』

『『もちろんだ!!』』








そして、エース達が再び走り出そうとすると、先ほどのマグマを操る男が白ひげを罵り、それまで走り去るつもりだったであろうエースは立ち止まり、男─赤犬─に攻撃をしかけた。
だが、炎とマグマでは明らかにマグマの方が強く、彼はいとも簡単に吹き飛ばされてしまい、その隙に赤犬はアンとルフィを狙ったのだ!








『アン!ルフィ!!』



一瞬のうちにエースはアン達を庇うように立ち、彼の背中から赤犬のマグマに変わった腕がエースの腹に突き抜けていた。
















『アン…泣くなよ。……おれは…おまえの側にずーっと……いるから。
おれ達は…二人で一人、だろ?…ただ、アンの中に、戻るだけ……だから。』

『エースゥ……や、やだ、よ…っ!!いなくなっちゃ、やだよ……っ!!』


ボロボロと大粒の涙を溢し泣きじゃくりながらエースを抱き締めるアンとルフィに、彼は思いを話し出した。






『…昔…誓い合った通り…おれの人生には…悔いはない!!
…おれが本当に欲しかったものは…どうやら名声なんかじゃなかったんだ…。
…おれは…おれ達は、“生まれてきてもよかったのか”。欲しかったのは…その答えだった。
……!!オヤジ……!!!みんな………!!!そしてルフィ……今日までこんなどうしようもねェおれを、鬼の血を引くこのおれを……!!愛してくれて………ありがとう…!!!』




そう言い残し、エースは微笑みを浮かべた穏やかな顔で逝った。





それからはまた次々に場面が変わっていく。

頭を地面に押さえ付けられながら、怒りに震え涙を隠そうともせずに吼える祖父。

赤犬との死闘を繰り広げ、頭部を半分近く吹き飛ばされつつもなお攻撃を続ける白ひげ。

突如現れた謎の軍団。

『ワンピースは実在する!』と告げて立往生した白ひげの後ろ姿。





そこまで見て、アンの記憶の映像は途切れたのだった。









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