十二宮を上っている間に、サガが代表して聖域の説明をしてやると、アンはそれを興味深そうに聞いていた。
アンは元々人懐こい性格のようで、あっという間に数人の聖闘士と仲良くなっていた。







「へぇー、アンって20歳なんだな。じゃあ俺やムウ、アイオリアにシャカにカミュ、あとアルデバランと同い年だ!」

「え!アルデバランも同い年なの!?勝手にもっと上かと思ってたよ。」

「はははっ、まぁ良く言われるんだ。それにしても、疲れてはいないか?」

「平気平気。戦いの時に比べればぜーんぜん余裕。」



あン時は能力無かったからキツかったけどねー、と笑って言ったアンだったが、その笑顔にはどこか翳りがあった。
アンの横を歩いていた俺はそれが気になった。
確か、双子の兄の処刑がかかった戦争だったと言っていたが、肝心の結末をアンは話していなかったし、あの腹の傷も気になったのだ。
だが、それを安易に聞いてはいけないような気がした俺は、開きかけた口を噤んだのだった。








「なぁ、その背中のタトゥーって何なんだ?」


アンの後ろを歩いていたデスマスクは、服がはためくと見える背中のタトゥーが気になったようでそう尋ねると、アンはニコニコと嬉しそうに笑って答えた。




「ああ、これは白ひげ海賊団のシンボルなんだけど、私達の誇りだよ。
オヤジや家族…あ、正確には仲間達なんだけど、家族のためなら……信念のためなら、たとえ勝ち目のない相手だろうと私達は立ち向かっていく。」


アンのいた海賊団で最も重い罪は仲間殺しなんだと言った。
それを近くで聞いていたシュラとサガは思わずアンから目を逸らしていた。
13年前、サガはアテナを守り逃走を図ったアイオロスを反逆者に仕立てあげて殺害命令を下し、シュラはそれに従いアイオロスに止めは刺さなかったものの致命傷を負わせている。
二人は、アンのそんな言葉に、胸を抉られたように感じたのだろう。


だが、そもそもは俺がサガを唆さなければもしかしたら二人がそんな事をする事も無かったのだろうか、と思うと、俺もほんの少し心が痛んだ。









アンやミロはそんな俺達に構わず話し続けているようで、アンの能力について話していたのを聞きながら歩いていたら、いつの間にか教皇宮にたどり着いていた。






「アンの能力が火だって言っていたけど、他にもあるのか?」

「うん。自然(ロギア)系は火の他に、煙、砂、雷、沼と氷や光……あとマグマと闇。」


アンは『マグマと闇』だけ忌々しそうな顔で吐き捨てるような口調になっていた。
その能力に嫌な思いをしたのだろうか?
そう思っていたら、同じ事を考えたようなミロはあっさりと聞いてしまった。






「マグマが嫌いなのか?」

「…っ!!当たり前だ!!!アイツの…っ、赤犬のせいでエースもオヤジも…っ!!!!」


それまで笑顔だったアンの表情は憤怒と憎悪、そして哀しみの混ざったような鬼気迫るものに変わっていた。
そんな感情を晒すアンに誰もが凍り付いた。




「アイツの…マグマが、私とルフィを守るために私達の前に立ちはだかったエースの腹を貫いて、エースは内臓を焼かれて……苦しいのに、私達を少しでも安心させるために………笑いながら死んだ。
オヤジも、赤犬の攻撃で頭の半分を吹き飛ばされても…私達のために最期の力を振り絞って戦って…死んだんだ……。」


アンの語った、彼女の兄と尊敬する船長である男の壮絶な死に、誰もが言葉を失った。


自分のために命をかけて助けに来た妹達を守るべく、自らの命を犠牲にしてまで愛する者を守った兄。
そして、血は繋がってなくとも大切な息子達のために道を作るべく、普通では考えられない事である、頭部の約半分を失ってまでも戦い抜いた『オヤジ』。
そして、彼らを助けられなかった事に対する己の無力さを感じ、そんな自分にも憤るアン。





彼女が抱えていた心の闇の深さに、俺の胸がまた痛んだ。

「エースが死んで少しした頃、アイツがいつか食べた『メラメラの実』が私の前に現れた。だから…私はエースの遺志を継ぐためにもそれを食べてこの能力を手に入れたんだ。」







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