アンはシュラの手を掴んで腕を抜かせると、軽くステップを踏んで距離を取った。





「別に攻撃するつもりもなかったんだけど、自分を守るためにはやむを得ないかな。」


アンはそう呟くと、カッと目を見開いた。
その瞬間、物凄い気が放出され、訓練生達は気を失ってしまった。
俺達黄金聖闘士も、あまりに強い気迫に不覚にも足が動かなかった。







「な、なんだこの強烈な小宇宙は……!?」

「いや、小宇宙とは少し異質だ!我らの小宇宙は燃焼させても人の気を失わせる事などない!」

「へェ、覇王色の覇気を受けても動けるなんて、あんた達も強いみたいね。」



不敵に笑ったアンが拳を炎に変えてグッと腰を落とすと、シュラ達も同様に腰を落とし攻撃できる体勢を取った。
だがしかし、その直後コロッセオにアテナの声が響き渡り、それまでアンに向いていた俺を含めた聖闘士達はザッと膝をつき、アテナと教皇をしている愚兄…もといサガと、前教皇のシオン様の方へ向き直っていた。
そして、アテナの背後にはいつの間にか、元々コロッセオにいた者以外のすべての黄金聖闘士が集まっていた。







「お待ちなさい!」

「「アテナ!」」

「…アテナ?」

「異界の方、私の聖闘士が失礼を致しました。
あなた方、その方は本当に、この世界の方ではないようです。
アンさん、と仰いましたか?出来ればで良いのですが、貴女の事をお聞かせくださいますか?」



アンは、話を聞こうとしなかったシュラ達をチラリと見てから、ようやくまともに話せる相手が来たと安堵した様子で話し始めた。

彼女が話す出来事は、俺達にとって信じられない事ばかりだった。
















アンがいた世界は大海賊時代で、海賊王ゴール・D・ロジャーが遺したワンピースと呼ばれる財宝を巡って数多の海賊がひしめき合う世界であり、アンはその世界でも最も強い四大勢力『四皇』の一人『白ひげ』ことエドワード・ニューゲートが船長をしている白ひげ海賊団に属していた事。
そこに双子の兄であるエースと共に家族として迎え入れてもらった事。
そして、その兄の捕縛・処刑騒動がきっかけで勃発した頂上戦争と呼ばれる、海軍対白ひげ海賊団及び2人の弟であるルフィと数名の海賊達によるエース奪還の為の戦い。

そして、その戦いにより双方共に多くの犠牲者が出て終結した、と話したのだ。










「しかし、なぜそのような戦争が起こったのだ?」


シオン様がそう問うと、アンは少し黙ってから口を開いた。








「…それは、私達が海賊王ゴール・D・ロジャーの子供だからだよ。」



俯いてそう話したアンの表情は良く見えなかったが、自嘲的に笑ってから、戦争後に同じ海賊団の船長代理を勤めるマルコの背に乗って移動中に強風に振り落とされて今に至る、と続けた。




「そのよぉ、マルコって奴は空でも飛べるのか?」

「ああ、あの人は幻獣種不死鳥の能力者だから、不死鳥になって飛べるんだ。」


アンの話に再び目を丸くした俺達に、アンは論ずるより見せた方が早いと、まず自らの腕を炎に変え、それから全身が炎に包まれた。





「私はこの通り、火を扱う………いや、むしろ私の体が火そのものになる能力を持ってる。……もっとも、元々はエースの能力だったけどね。
私の世界にはいろんな種類の『悪魔の実』ってものがあって、それを食べた者は実によっていろんな能力を身につけるんだ。
私なら炎、弟のルフィはゴム人間に、マルコは不死鳥に変化したり、自分の傷を不死鳥のように治せたり……ね。」


アンは姿を戻しながらそう説明すると、アテナの方に向き直って、自分が話せる事は以上だと告げた。
それを受けたアテナは頷くと、その場にいた聖闘士達にアンを聖域にて保護する旨と、それに異のある者は申し出よと言うと、彼らは皆アテナを見据えて頷いた。
アンの話を聞いて、また、能力を目の当たりにしてなお、不審を持つものは誰一人としていなかった。
それほどまでに、アンの持つ能力は異質なのだ。


全員の賛成をもぎ取ったアテナは、アンを教皇宮に滞在させる事にしたので、全員で場所を教皇宮に移すために階段を上り始めた。








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