「ああ、これね。電伝虫って言ってね、念波で仲間と交信する性質を持ってるからそれを利用して、受話器とかボタンを取り付けて特定の電伝虫と交信させるんだ。」


アンの話によると、人間がソイツに付けられた受話器に喋ると、受信側の電伝虫が喋っている人間の感情や表情を真似しながら声を伝える、との事だった。
そして、電伝虫は人間に捕まると安全と生活が保障される事を知っており、人に捕まることを嫌がらないのだが、やはり生物だから極寒の地など過酷な環境では使用できない……らしい。
ならば、カミュら師弟バカ達が良く行くシベリアでは使えないのだな。



ちなみに、一般の電伝虫の幼生で、手乗りサイズで携帯性に優れるが通信範囲が狭い(アンのはこれのようだ)のは子電伝虫、盗聴用の黒電伝虫、他には監視用の奴やテレビカメラと同等の役割を持つ映像電伝虫などがいるらしい。








「もしかして、俺達がコイツに小宇宙を送ったらしゃべるのかな?」

「ふむ…、試してみるのも一興だな。」



シオン様が楽しそうに笑ってから少し離れた場所に移動すると、アンの持つ子電伝虫が発している電波……と言うか気配と言うか小宇宙っぽいものを探り、それに向かって語りかけたようだ。
すると、それまで目をつぶっていた電伝虫がキリッとした表情になったのだ。







『アンよ、其奴は話し出したか?』

「バッチリ!!うわー、相手側が電伝虫使わなくても話せるなんて凄いっ!!…でも呼び出し音(?)鳴らなかったなぁ…。」

「ううむ、ますますこの生物が分からなくなってきた。」


アンに言わせれば、コイツは通信が入ると自分の口で『プルプルプル』と呼び出し音の真似をするとの事らしいが、何とも不思議な生物だ。
しかし、これが使えるかよりもアンが小宇宙通信を使えるかを試した方が早いのではなかろうか。
そう考えた俺はさっそくアンに小宇宙を通じて話しかけてみた。







『アン、聞こえるか?』

「うわ!今カノンの声が聞こえた!空耳か!?」

「ばーか、俺が小宇宙を通じてお前に直接話しかけたんだよ。」


これでアンが受信を出来る事は判明した。
発信に関してはいきなりは出来ないだろうし、こちらの世界に来たばかりなのにいろいろと詰め込みすぎるのも大変だろうと言う話に落ち着き、アンがここに滞在している間に少しずつ訓練しよう、と言う事が決まったのだった。













「アンさん。こちらの世界には地上と海界、そして冥界があります。
今は三界で和平を結びましたので、アンさんさえよろしければ一度海界や冥界も訪れてみるのもいいかも知れませんね。」

「アテナ、海界は良いとしても冥界は無いでしょう。あそこは暗いし陰気過ぎますからね。」

「ム、ムウ……(汗)」



黒い笑みを浮かべるムウにアンは少しだけ引いている様子だ。
ま、まぁ…あんな人畜無害そうな風貌のムウから醸し出される黒いオーラは知らない奴なら引くだろうな。






「あ、ねぇ。海界って…海の事なの?」

「ん?そうだぞ。海の中に神殿があってな…なかなか綺麗なところだ。」

「へぇー、海の中の神殿かぁ……魚人島を思い出すよ。それにしても、カノンは海界にも詳しいんだね!」

「あ…ま、まぁな。ここに慣れたら行ってみるか?」

無 理 ! 」←ドーン!!



アンに海界について詳しいと言われた時に、なぜか本当の事を言えなかった。
別に話してもなんら問題はないのだろうが…アンにはまだ知られたくないと無意識に思っていたのだろう。
そんな事より、神殿に行ってみるかと聞いたその直後、キッパリと無理だと言い切ったアンの背後に、『ドーン!!』と言う効果音が見えた気がした………






「なぜ無理なんだ?」

「私ら能力者はみーんなカナヅチなんだ。だから無理。」

「……は?」

「悪魔の実の能力者は力を得るのと引き換えに海に嫌われちゃうの。だから、海とかに浸かると力が抜けて沈んじゃったりするんだ。」









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