「…って訳なんだ。」
「どんな訳だよ。ところでそのクレアって子、可愛いのか?」
その後、グレイターミナルに着いたおれはサボと合流すると、さっき起こった出来事をサボに話した。
するとサボも、クレアに興味を持ったみたいだった。
ただアイツは純粋に、初めて自分の近くに現れた『能力者』がどんな人物なのか気になっているだけみたいだけど。
「でも、どうしてあんなに躊躇いもなく谷底に飛び込めんだ…?」
「そりゃあ、血がつながった姉弟だからじゃないのか?まぁ、おれも兄弟いねェから分かんねェけどな。
それにしてもエース、おまえやけにその娘を気にしてるな。」
そう。
サボの言うとおり、なぜかおれはあの女の存在が気になっている。
…ただ、なんかアイツの目とか雰囲気が少し気になっただけだ。
笑ってるくせにどこかで線を引いてルフィ以外の人間を拒絶してるように見える。
今思えば、そんなとこまで気付いちまうくらい見てたのに、おれはその時の気持ちを『ただ気になっただけ』と、そう思い込む事にしてた。
実はクレアに一目惚れしていたから、アイツの事を良く見てたし、そこまで気付いたんだと自覚するのは、もう少し先の話。
それから数日後。
全身傷だらけになったルフィが、同じように傷だらけのクレアを背負って帰ってきた。
ギャンギャン騒ぐダダンを宥めながらマグラがルフィに声をかけた。
「まーまー。お前ら、どこで何してたんだ?」
「…谷の下で狼に…追いかけられてた…。」
「谷底!?何しに行っティたんだ?それにクレアは…」
「おれが弱っちぃから……おれをずっと守ってクマとかと戦ってくれてたから…疲れて気ィ失ってる。」
「んなこたぁどうでもいいよ!とにかく今日はもう寝ちまいな!!明日からきっちり働くんだよ!」
ダダンはそれだけ言うと、手当てを終えたルフィと、まだ目を覚まさないクレアをそれぞれの布団に放り投げた。
布団に着地すると同時に、ルフィはイビキをかいてグッスリ寝てた。
それを確認すると、おれは体を起こして、おれとルフィの真ん中で眠ってるクレアを眺めた。
体のあちこちに包帯やら絆創膏が貼られていて、痛々しい。
その一つを撫でると、とピクリと身動ぎをした。
「!!!」
おれはあわてて腕を引っ込めるとガバッと布団を被った。
心臓がバクバクと煩く音を立てている。
だから何なんだよ!
静まれ、おれの心臓!
………まさか。
おれ、病気なのか!?
だって、今までこんなに心臓バクバクしたことねェんだぞ!
だけど、クレアに触れた時とかだけだよな…。
くそっ、良く分かんねぇ。
こんな時は……寝ちまうに限るぜ!
おれは良く分からない、モヤモヤした気持ちを抱えたまま夢の世界に引き込まれた。