その夜。
どうにも眠りにつけなかったおれはこっそりと寝床を抜け出して、少し離れたところにある海沿いの岩場にやって来た。
岩に腰を下ろして、空を見上げればそこには満天の星が広がっていた。
少しすると、誰かが近づいてくる気配を感じた。
それはサボじゃなく、ルフィでもない。
「…クレア、か。」
「となり、いい?」
「…あぁ。」
クレアはおれのすぐ隣にそっと座ると、同じように星を見上げた。
ひんやりとした空気で冷えた体だけど、クレアがおれにぴったりくっついている右側だけが暖かい。
そんな温度が意外にも心地よくて、しばらくそのままで、同じように空を眺めていたら、それまで黙っていたクレアがふと口を開いた。
「エースにはちゃんと話しておこうと思ってきたんだけどね…ルフィは、じいちゃん以外いない…って言ったんだけど、さ。
あの子は知らないんだ。」
「?」
「本当はね、父親…いるんだ。世界のどこかに。」
「世界のどこか……海賊か何かか?」
「ううん…父さんは、世界政府にも危険視されている革命軍のリーダー……モンキー・D・ドラゴン。」
「……!!!」
だからね、私達があの人の子供だって事は……本当は絶対に知られちゃいけないんだって。
クレアは寂しそうに笑いながら呟いた。
その笑顔はあまりにも儚くて、今にも消えてしまうんじゃないかと思う程だった。
あぁ。
クレアがおれと似た目をしてる理由が、やっと分かった。
コイツもおれと同じだったんだ。
だからおれは気になって気になってしかたなかったんだ。
気がついたらおれは、クレアの手をギュッと握り締めていた。
「少なくとも、ルフィとジジィと……おれ達にとっては、いてほしい…けどな。」
「……エース…、ありがとね。」
隣に座っているおれの顔を覗き込んだクレアは、満面の笑みを浮かべていて、その笑顔におれの心臓はバクバクしていた。
だけど、決して不快なんかじゃなくて……落ち着くのも不思議だと思う。
まだ会ってから数ヶ月…まともに話したのは今日が初めてだってのにな。
会ってから数ヶ月と言えば……、クレアの能力を見たってのも気になってる理由のひとつかも…。
「……なぁ。」
「ん?」
「お前、悪魔の実の能力者…だよな。」
おれがその話題を口にすると、少し表情が曇った。
なんて言うか、心なしか悲しそうにも見える……。
やっぱ、普通の人間と違ってしまうのをクレアは気にしてるのか?