今流行りのインフルエンザに冒された。熱が火照らす頬、ずるずると嫌な音を止めない鼻、水分を失った唇。しんどいよう。また、口の中がぬめり気を増してきた。枕元に置いてあるポカリを流し込む。その潤いは一時的でしかないんだけれど。気休めの如く目を閉じる。一日中寝てたのに人間って不思議なもので、またうとうとしてきた。

「おい、なまえ」

バタンと大きな音がして、隔離された部屋と廊下が繋がった。同時に私の意識もぼやぼやしてはいられなくなった。

「じゅ、んた?」

「おう。見舞いに来た」

口にはしっかりマスク。家族のその姿じゃ何も思わないのに、準太のその姿は少し傷つく。なんか病原菌扱いされてるみたい。甘い言葉を期待して素直にそう言ってみたら、実際病原菌だろと言われてしまった。その言葉に拗ねて、準太に背を向ける。殺風景な白い壁は何の慰めにもならない。

「……気分悪くなった?」

うん、違う意味ですごく気分が悪いよ。なんてことを思っていると、背中越しに、こっちへと準太が歩いて来る音がした。ベットが軋んで、四六時中ボールを触ってる手が私の頬に当てられる。ゆっくりと首を動かせば、マスクを取ってさらけ出された準太の整った顔があった。拗ねたのを察してくれたのかな。段々と下がってくる準太の顔に比例し下がってゆく私の瞼。

「熱すごいな」

ぶつかったのは唇じゃなく、おでこ。キスじゃないのか。がっかりした表情を読まれたのか、にやけた顔で準太が言う。

「キスすると思った?」

「思って……ない」 

「右上見てる。嘘だろ」

「思ってない!」

「はいはい。目ぇ瞑れー」

準太はいじわるだ。そんなこと言っといて目を瞑れなんて。けど、今はキスが欲しい気分だったから、素直に瞼を下ろした。

「ぶはっ」

「ちょっと、何で吹き出すのよ」

「いや、お前がほんとに目、瞑るから。面白くて」

「準太が言ったんじゃない」

「ばーか。キスなんかしたら移るだろ」

「そこはお前のなら移っても良いって言うとこじゃないの?」

「俺インフルかかりたくねぇもん。練習だってあるし」


ロマンチックなんて期待するだけ無駄
(けど、部活を休んでまで来てくれた優しさは理解してる)


*****
新型インフルが流行ってるので。
因みに私も今現在インフルにかかってます。
でも超元気、逆に心配になる位、元気。
ヒロインちゃんと違うとこはお見舞に来てくれる彼氏が居ないってこと(…)
今回は甘い雰囲気と見せかけ、そういう展開にはならないというツンデレ風味です←
今回あとがき長いな


091113
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