先程小さいと言われたせいで、エドの機嫌は最悪だ。折角のデートだっていうのに手も繋げやしない。これしきのことでぶつぶつと口を尖らせて愚痴っているなんて、人間として小さいなあ、なんて私は思ったりするのだけれど。 「あーもう、思い出したら腹立つ」 「いい加減機嫌直しなよ」 「こちとら天下のエドワード・エルリック様だぞ」 「はいはい。いいじゃない、エドより身長低い人なんていっぱい居るんだし」 「お前、とか?」 「そう。私とか」 そう言って少し上目遣いでエドの金色の瞳を見つめると、照れられてしまった。その勢いで握られた手からは、どくどくと脈打つ鼓動が伝わってくる。全く、単純だなあ。 「ねえ、今日はどこ行くの? 私美味しいもの食べたい」 「いや、まあ……うん」 曖昧な返事に顔をしかめていると、人の多い大通りに背を向けるようにしてエドがこちらを向く。私はまるで、エドの影に隠されるような格好になる。 あっ、と思った次の瞬間、エドの唇が上から降りてきて、柔らかい感触が私の唇に当たる。 「っ……エド!」 「ごめん、我慢出来なかった」 「いい、けど」 「お前可愛すぎ」 「そんなことない」 「オレにとっちゃ可愛いんだよ」 「わかんない」 「オレが屈まなくちゃいけない身長差、とか」 それを聞いて私は落胆してしまった。もっと、仕草とかそういうものを可愛いと言ってくれるのを期待したのに。女の子はそういうところを褒めてほしいものなのに。 錬金術の本ばっか読んでないで、もうちょっとくらい女心を勉強してほしいものだ。 「このお前の頭に手を乗せられる感じも、可愛い」 また身長差のこと、とむくれたフリをするけど、軽く叩かれた頭のてっぺんだけが、温かくて、幸せで。思わず頬を染めてしまった。 仕返しに背伸びをしてキスしてみたら、エドは私をぎゅっとその腕の中に収めてくれた。予想外の行動に、私はつま先立ちのままの体勢でただつっ立っていた。 煩わしいこの身長差も、君は好きだと言うから ***** 何か甘いもの書きたかったのに、見事に失敗。 101109 |