いつもの屋上に風が一筋通る。髪を優しく撫でるようなこの風は、気持ちがいい。
隣で飴玉を転がしているなまえも、喉をゴロゴロされた猫みたいに気持ちよさそうに目を細めている。

「ゆーた次の授業なに?」

「数学」

「私は保健だ」

「そう」

「やらしーこと勉強してくる」

「女の子がそういうこと言わないの」

むう、と膨れっ面をする彼女は、いつもいちいち可愛くて困る。無関心だと思っていたスキとかいう薄紅色の感情にだって、触れてしまう有り様だし。
こんなの自分じゃないみたい。だけど、なぜか気持ち悪くはない。

「聞いてよ悠太。要ったら酷いんだよ」

「またなまえが何かしたんでしょ」

「そんなことないよ。ただ、」

「ぷっ」

「え、なに? 何で今のタイミングで吹き出すの?」

俺が変なタイミングで吹き出してしまったのは他でもない、なまえが原因で。ノートに書かれていたであろう文字たちが綺麗になまえの手に写ってしまっていて、手の側面が真っ黒だったからだ。作文とかを書くときになるやつ。まるで小学生だ。
全くほんとに。

「ねー、悠太!」

「なまえね。あんまり可愛いことしないように」

「は? 私別に可愛いことなんてしてないよ」

「ノートに俺の名前書くなんて行為、可愛い以外の何者でもありません」

かあああ、と染まる頬。何で知ってるの?みたいな顔をするなまえに、手を指差して「写ってる」と言ってやると、慌ててそこを見る。
浅羽悠太、と授業の中では絶対に出てこないであろう単語が並んでいるのを見て、また拍車を掛けたようになまえは赤くなった。
火照った体には、この風は余計に気持ちいいんだろうなあ。



かっこわらい



*****
意味分かりますかね…?
作文とか書くときに小指の付け根あたりから手の平の側面あたりが鉛筆で黒くなる現象。
あれ見たら可愛いと思ってしまうのです。

タイトル、3/19

100904
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