かくれんぼしよう。
我らが船長が唐突にそんなことを言い出したもんだから、ウソップとチョッパー、それから私は、隠れ場所を探して必死に船内を駆け回っている。
こんなに船内を走り回ったのは、この船に初めて乗った時以来ではないかという程だ。
いつの間にか私以外の二人はどこかに隠れたようで、気付けば私だけがドタドタと煩い足音をたてていた。

「100数えたぞー!」

ルフィの声は真上に見えてる空さえも震わしてしまいそうだ。
でも今はそんな悠長なことも言ってられない。一刻も早くどこかに身を潜めなければ。

「おーい、あとはお前だけだぞ!」

そう言って私の名前を呼ぶルフィ。
でもここなら絶対見つからない、その自信がある。多少ズルいかも、しれないけど。
それにしても、私がここに隠れてからどれだけ経ったんだろう。何もせず息を潜めているだけは性に合わないようで、退屈だなぁと不満を漏らした、その時。 

「見つけたー!」

というルフィの声をキャッチすると同時に、私が隠れていた場所、女子トイレのドアが呆気なく壊れた。

「え……ルフィ?」

「見つけた!」

「いや、うん、おめでとう。でもここ女子トイレなんだけど」

「うん知ってる」

知っているなら尚更問題だ。もうお互い、いい年頃なんだから。恥じらいくらい、持とうよ。
それを言うなら、こんな年になっても本気でかくれんぼをする私たちも、大人っぽさの一つくらい持った方がいいんだろうけれど。

「ナミかロビンだったらどうするのよ」

「だって二人とも甲板に居たしよー」

「う……それに私だってその、用を足してる最中だったかもしれないのよ」

目の前にケロリとした表情で仁王立ちするルフィ。言ってるこっちの方が赤くなっちゃって、馬鹿みたい。ていうか乙女にこんな発言させるな。
こんなデリカシーのない男のせいで心臓がバクバクだなんて、屈辱的。

「……ルフィ?」

じりじり近付いてくるとか、そういうまどろっこしいことをルフィはしない。そもそもトイレという狭い空間だ、一瞬にして二人の差は縮まった。
便器に腰掛けている私と少し腰を屈めるルフィ。
距離ってものを初めて意識した気がした。

「近い近い」

「んー珍しく二人っきりだからよ」

「だから?」

「キスの一つでもしとこうかなァと」

さっきも言った通り、ルフィはまどろっこしい動作はしない。ぐずぐすしていたらすぐに間を詰められて、唇は重なってしまうだろう。

「ちょっと待ってよルフィ。そんな勝手な、」

「勝手じゃ悪いか」

「だ、いたい! 恋人でもないのに」

「じゃー今からコイビト」

そんな取って付けたように告白されて、も。自分勝手すぎるにも程がある。
再び近付いてくるのを感じて、サッと口を手で覆う。

「やだ!」

「……やだと思うんなら逃げろよ。ドアも壊れてるし、逃げようと思えば簡単だろ?」

ああほんと、この人はたまにこうやって鋭いことを言うんだから。全く困ってしまう。目だって急に、戦闘中みたいに真剣だしさ。
口を覆っていた手に力が入らなくなる感覚。だってどうしよう、抵抗する理由が見つからない。

「逃げなかったのはさァ」

見つけてしまったよ、隠しようもない気持ち。

「おれにならキスされてもいいって思ったからじゃねーの?」


 
はろー、
私のロマンスちゃん






*****
たえさんとの相互記念に贈らせていただきます! 遅くなった上、拙いお話ですいません…。
たえさんからはエースのお話をいただいたので、ルフィでお返ししてみました。D兄弟はいいですよね!
どうぞこれからもよろしくお願いします。

100628 to.たえさん
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -