「なあ」

「うわ!……い、ずみ」

ぼけーっとしていたら、いつの間にか隣に泉。なんて幸せなポジション。なのに、笑えないのどうして?

「俺さぁまだお前からチョコ貰ってないよな?」

しかも何でその痛いところを突いてくるの。

「彼女から貰えないとか俺、痛い奴じゃねーか」

「ごめん。泉の分失敗しちゃってさ、今日何も持ってないの」

嘘。ばっちり作って来てる。友達のとは別に、ちょっと頑張ったガトーショコラ。自信はあるんだ。けど、渡せない。
昼間、違うクラスの女の子に呼び出された泉を、物陰から見てた(ごめんね、ちょっと不安だったの)。その子からのチョコは受け取ってはいなかった。それはいいんだけれど、その断り方がずっと心につっかえる。「俺甘いもん無理なんだ」という泉の言葉が無限ループ。何で彼女なのにそんなことも知らなかったんだろう。思いっきり甘いものを作っちゃったじゃない。

「嘘つけ。鞄から見えてんだよ」

慌てて鞄を見やれば、確かにピンクの袋の端っこがひょこりと顔を覗かせていた。

「こっ、れは!友達に!」

「また嘘。だってそれ他の奴にあげてたやつと違うじゃんか」

友達のはクッキー、泉のはガトーショコラ。友達のは透明な袋、泉のはちょっと凝ったピンクのラッピング。なんでそんなとこまで見てんのよバカ。
もういい加減泣きそうだ。

「なあ、くれねえの?それ」

「だっ、て」

「ん?」

「昼間女の子にチョコ渡される時、甘いもん無理って……」

はらり、ぽろり。ちょっとずつ涙が落ちる。泉の溜め息らしきものが聞こえたのは空耳?

「お前さあ、それで渡してくんなかったの」

「思いっきり甘いもん」

「はあ……あのな、あれただの嘘。受け取らない口実」

涙の溜まった目で見上げると、少し目線を逸らされた。 

「それに!お前から貰えるやつならどんなんだって食うから!言わせんな!」



融き解け



*****
一足遅れてバレンタイン。あと1、2話バレンタイン関係の話あげるかもしれません。
バレンタイン過ぎてからいっぱいネタ浮かんでくるなんて……

今回ツンデレ泉を書こうとしたんですが…うん

タイトル、あもれ

100217
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