最近少しばかり事が重なり、家でも残業三昧だ。デスクワークはあまり好きではないことと、なかなか減らない書類の量に苛立っていたのもあり、思わず煙草に手が伸びる。……っと。ぐるりとベッドの方に顔を向けると、体がすっぽり収まってしまうくらい大きなオレの毛布を被って本を読んでいるなまえ。今はこいつが居るんだった。名残惜しい気持ちもあったが、煙草をつまみかけたその手でまたペンを握ることにした。
オレの仕事が忙しい分、なまえが部屋に来ることが増えた近頃。ブランド品が並んだウィンドウも見ることができないし、窓から見える夜景はなんて殺風景。でも、こんなゆったりした時間も嫌いじゃないなと思う。(オレもおじさんになってきた証拠か?)だってなまえが有り合わせのもので作ってくれる夕飯は美味いし。
そんなことをうだうだ考えていると、いつの間にかペンは動きを止めていた。もう少し頑張ろうか。ペンが紙を引っ掛ける音とページを捲る音が妙に変なリズムを奏でる。それに混じって、乾いた音。これは……関節を鳴らしてる音? もう一度ぐるりとベッドの方を見る。やっぱり。

「おーい、なまえ。女の子がそんなボキボキするなよ」

「ジャン、ご立派に男女差別?」

「な……」

「ジャンだってよく関節ボキボキ言わせてるじゃない。ジャンは良くて私は駄目なの?男は良くて女は駄目なの?」

こいつのこういう物言いにはもう慣れた。でもほんとに何も分かってないなあ。

「だからその……指輪とか入んなくなっだろ」

自分の発した言葉なのに、その現実味がない。なのに恥ずかしさはちゃんとある。いやいやいや、これは「プロポーズみたいな言葉」であって、プロポーズじゃないんだから。落ち着け、オレ!

「私、指輪付ける予定ないし」

ほんとに何も分かってない……。



彼女はポキポキ中毒者



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うーん…ごめんなさい

091228
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