紅茶の入れ方にはちょっとしたこだわりがある。カップを温めておくこと、数分蒸らすこと。そんなに特別なことでもないんだけど、美味しくなる気がして止まない。 「ねー、まだぁ?」 「今蒸らしてるの。ちょっと待ってて」 「蒸らすとか別にいいじゃん」 「私のこだやりなんだから。1、2分くらい待っててよ」 エンヴィーはまだ不満そうな声を上げていたけれど、聞こえない振りをして冷蔵庫からミルクを取り出す。すると、皮膚の表面が冷たさを訴えた。カップの上に乗せていたソーサーをどけ、ゆっくりと白濁の液体を注ぐ。視線を感じて顔を上げると、カップの中を熱心に見つめるエンヴィーがそこに居た。 「急に……どうしたの?」 「僕さ、このミルクと紅茶がが混ざりあっていくとこ好きなんだ」 言われてみて改めてカップの中を覗き込む。流れに乗りながら混ざっていく白と茶色?飴色?ともかく紅茶の色が、これまた表現しにくい新しい色をつくっていっていた。確かに良い光景だと思う。 「僕となまえみたい」 「えー?」 「僕がミルクで、なまえが紅茶」 「理解しかねるなあ。どっちかって言うと私がミルクでエンヴィーが紅茶じゃないじゃない?色的な意味で言えば」 まあ紅茶の色って訳でもないけど。やっぱり黒だね、エンヴィーは。 「違うよ。絶対に僕がミルク!」 「何で」 「だって紅茶は透き通ってるけど、ミルクは濁ってるでしょ?」 その言葉に、逸らされることない瞳に、気圧される。手に持ったままだったミルクの冷たさが増した気がした。 「なんでそんなこと言うの?」 「んー何となくそう思っちゃって」 「私、エンヴィーが思ってるほど綺麗じゃないよ」 「うん」 「エンヴィーが知ってる醜い人間の一人だよ」 「うん知ってる」 「だからそんなこと言わないで……」 「けど例えばさ、この涙は綺麗だと思うんだよね」 目から落ちていくものを掬うように、拾うように、愛しそうに拭ってくれる手。ああ私、いつの間にか泣いてたんだ。何で。その手の感触も、温度だって何もかも、別に私たちと大差はないのに。 「綺麗な色だね」 できたてのミルクティーを指差し、エンヴィーが言う。少し覗いてから、そうだねと返す。まだモヤモヤしたものが私の中から消えない。ひどく不安、そう不安なの。 「こんな風に混ざり合えちゃえば幸せだよね」 「そうだね。……ほんと、そうしたら私、不安になることもないかもね」 「そうだよ」 「そうだね」 「でもさ、もうちょっとくらい混じり合えてるんじゃない?」 「そうだと良いな」 「だからミルクティー、飲もう?」 「うん」 「温まるね」 「ほら、いつもより美味しいでしょ?」 「うーん、別に変わらない」 君と愉しむティータイム、そして物語は完結さ (World is beautiful!) ***** 紅茶を飲む話が書きたかっただけなのに、意味不明なことになりました にしても最近、文中に温度って単語使うこと多いなあ 人肌恋しい季節だからかな?← 091205 |