珍しい休みだから初めて孝介の部屋に行って、興味深いから飽きもせず部屋の中を物色する。

「お前いい加減にしろって」

「何よ。見られちゃ困るものでもあるの?」 

「いやあるっちゃあるけどさ……」

「あれか。世間一般の男子たちが貪り読むと言うエロティックな本か」

「ちげーよ」

じゃあ何なんだ。ていうか孝介の見られたくないもんなんか知らないし。私は今、小汚ないシャツたちに埋もれていた可哀想な漫画たちと戯れているんだ。邪魔すんな。

再び沈黙、時計だけが鳴っている。かちかち煩いなあ。孝介の部屋の時計は見事な空気読めなさぶりだ。その時、不意に外気に晒された足。睨めつけるように孝介を見る。

「ちょっと、何で靴下脱がすのよ。今秋だよ?寒いじゃない、返して」

「だってお前相手してくんねーし」

「だからって靴下を脱がせる意味が分からない」

「強いて言うなら個人的趣味?制服に素足ってさ、すげえ良い」

「マニアックな趣味に彼女を付き合わせないでください」

「だってこれ、そういう状況じゃん」

そういう状況ってのが何を指してるか位、私にも分かった。ジリジリと近付いてくる孝介を前に、さっきまでの私の強気は少しばかり吹っ飛んでしまう。そして、変な体勢のまま口づけられる。無理して曲げてる肘がちょっと痛い。噛み付くようなキスをされて、孝介はこの為に私を部屋に呼んだんだと、今更ながら理解した。

急に無理に曲げてた肘の痛さが和らいだ。それは完全に押し倒されたからだと気付いたのは、また唇が、今度は真上から降ってきたからだった。ちょっ、待て待て待て。 

「こっ、孝介!」

「んだよ」

すこぶる機嫌が悪そうだ。けれど引き下がるわけにも行かない。私はまだまだ処女を捨てる覚悟なんて持ってないんだ。 

「今何時?」

「……6時すぎだけど」

時計!さっきは空気読めないとか言ってごめん!あんたこの世の空気読み尽くしてるよ。きっと前世は空気だったんだよ。

「んじゃ残念だけど私もう帰らなきゃ。今日はお父さんの給料日で、家族で美味しいもん食べに行く予定だったんだ」

「ふーん。自分だけ美味しいもん食べに行くんだ」

孝介、今はその言葉さえエロティックに聞こえるんだから場の雰囲気って怖いね。とかなんとか思っていたら、孝介は私の上から撤退し、スクッと立ち上がった。私の願いが通じたんだろうか。案外優しいじゃん。

見直していた、その時だった。孝介は、時計を逆さまにし、ちょうど12という数字が真下に来るようにして、また元の場所に置く。私は意味が分からない。孝介、時計ってそういう向きで置くもんじゃないんだよ?ていうか何でまた私の上に乗っかってくるの?

「まだ、12時半過ぎだろ?」

……理不尽すぎる。
「※これはフィクションです。」



*****
制服(セーラー服なら尚良し)に素足は私の趣味です。
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タイトル、3月19日(木)


091114
091115 加筆訂正
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