「謙也くんのことが好きです」

誕生日に告白されるなんてベタなことは初めてだった。そのせいか、いや、滅多にされることのない告白のせいか、顔が熱くなる。
そういえば白石は誕生日に何回も呼び出されとったなあ。

「お、おおきに。……いっこ、聞いてええ?」

「なん?」

「俺のどこを好きになってくれたん」

パッと顔を背ける姿は素直に可愛らしいと思った。
同じクラスの白石と比べれば顔なんて全然良くない。性格も白石みたいに完璧とちゃう。勉強やって白石ほど出来る訳やない。
なんで俺なん? そう考えてしまうのはそんな才色兼備な奴が側に居るからやろか。それとも俺が捻くれ者やからなんやろか。

「優しいから。謙也くんはいっつも人のこと考えとるから」

「やさ、しい?」

「おん。謙也くんほど優しい人、うち見たことないわ」

照れたようにに、でも凛とした声で優しいと断言され、俺も気恥ずかしくなった。二人して顔を真っ赤にして、周りから見ればどれだけ滑稽な光景だろうか。

「白石とか居るやん。俺はあいつの方が俺より優しい思うけど。実際めっちゃモテとる理由の一つは優しいからやし」

「んー白石くんも優しいけどなあ。かっこええし、色々完璧やけど……」

「せやろ? じゃあ何で俺なん」

「でもうちは謙也くんのが優しい思うで」

「……俺が白石に勝っとるとこなんか足の速さくらいや」

「なんでそんな卑屈になんの」

ちょっと怒ったような顔をしてからふっと表情を緩めるみょうじさん。
その表情があまりに綺麗というか、俺を安心させるものだったからどうしたらいいのか分からなくなり、言葉さえ見つからない。

「一年間だけやけど謙也くんと白石くん見てて、なんていうか、白石くんが白石くんで居れるんは謙也くんのおかげなんやろなーって思ってん」

ぽかんとした表情を読み間違えられたのか、「偉そうにごめん!」とみょうじさんはすごい勢いで頭を下げた。

「うちがこんなこと言うの変やって分かってるけど、二人の全部なんか知ってるはずもないけど、でも、クラスメートとして見てただけで分かった。謙也くんは自分のことより周りのことを常に気遣ってて、周りの人がほんまの素で居れるようにしてくれとるんやって。謙也くんの周りの人に笑顔の人が多いんは、謙也くんが笑顔でおれるように気遣ってくれとるからや、って。偉そうやけど思うねん」

そんなとこが好きやねん、とふにゃりと顔を崩したみょうじさんに鼓動が跳ねた。
そんな風に言われるのは初めてで、白石や周りの奴らを俺が支えとるなんてこと考えたこともなくて。
嬉しかった、優しいって言うてくれて。

「俺、優しいかなあ?」

「おん。やから、私も謙也くんの側で笑っときたいなあ、って、思うんやけど……どうやろ?」

再び顔をもこれでもかってくらい真っ赤にさせて俯いてしまった顔を持ち上げて「これからよろしゅう」と笑い掛ければ、みょうじさんも同じように笑ってくれた。


うれしいからわらっています


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謙也誕生日おめでとう。優しいあなたが大好きです。

タイトル、あもれ

110317
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