待ち合わせ場所に来た彼女が真っ赤な目をしていたら、そりゃあまあ誰だって驚くだろうし、心配だってするだろう。しかし慌ててどうしたと尋ねて返ってきたのが目に虫が入ったというなんとも腑抜けた答えなら、安心すると同時に脱力してしまうのもまあ当然だろう。 彼女の右目からは異物に対抗する涙がじわじわと滲んできている。 「なんだ、そんなことか」 「そんなことかって、祐介ひどい」 「あっこら! 目ぇ擦るんじゃねえよ」 「……なんで?」 「余計赤くなる。ちょっと上向け」 「な、なにするの」 「目薬差すだけだよ。コンタクト用のだけどまあ大丈夫だろ」 少々不安げに、首を上に向ける彼女。その瞼を押さえて、持っていた目薬を数滴瞳に落とす。彼女の涙と混ざり合いながらそれは頬を伝う。本当に泣いているみたいだ。 「ん、終わり」 「まだごろごろする……」 「何回も瞬きしてみろ」 「うー」 そんな呻き声を出しながら、つらそうに瞬きを繰り返す。オレがしたことだけれど、目薬のせいで涙を流しているみたいに見える。そんな姿を見ていると、少しオレにだってくるものがある訳で。 堪えられなくなり、無理やり彼女の手を取り歩き出す。どこ行くの、と焦ったように彼女が尋ねてくる。けど、今のオレのこんな気持ちを言える訳もなく、むすっとした表情を浮かべながらただ人混みをずんずんと歩いていく。 「ねえ、祐介!」 「……」 「なに怒ってるの? 私なんかした?」 「別に、怒ってねーし、お前はなんもしてねえよ」 「じゃあなんなのよー」 「お前には説明したって分からない!」 思春期パンクチュエーション 120703 むしろ小沼先輩はいつだって思春期 タイトルは私の造語です。使い方間違っていると思うけど、ニュアンスと語呂だけで決めたので許してください。 去年途中まで書いたものに加筆したんですが、どこに落とし込めばいいのか分らなかったです…… |