最近の私の目下の悩みは、後輩の紫原である。いつもお菓子を抱えていたり、少し鬱陶しい間延びした喋り方をしたり、妙なあだ名をつけたりと、以前から理解できない点はたくさんあったが、最近、それに輪を掛けて理解不能な言動ばかり取るのだ。
うーん、頭が痛い。
そんなことを考えながら、私は背の高いロッカーの上にある荷物を取ろうと精一杯背伸びをしていた。しかし、背伸びをしてやっと荷物にタッチできるくらいなので、ロッカーの上から荷物を降ろすことは恐らく不可能だ。
仕方ない、何処からか踏み台を探してこよう。そう思った時だった。視界の端を捕らえるように、にゅっと伸びてきた長い腕。

「はい、先輩。これ取るんでしょー」

間延びした喋り方。頭の真上から降ってくる声。
来たよ、悩みの種。

「紫原、練習は?」

「今休憩だしー」

「えっ、予定より早くない? ドリンク持ってかなきゃ」

「ねえねえ、それよりさぁ」

紫原がにこりとも、にやりとも言い難い独特の笑顔を浮かべた。言うならば、にたり。私はこの笑顔が苦手だ。
怪しい雰囲気に身構えていると、紫色の頭がすっと下がってきた。私の普段の視線と同じところくらいまで。ほらまた、こうやって理解不能な行動をする……。
いつもなら絶対に見ることの出来ないつむじが目に入った。

「荷物取ってあげたお礼に頭撫でてよ」

少し顔をあげて、意地悪な視線でこちらを見る。その視線にたじろいでしまうあたり、私がこの後輩に弱いことを示唆している。

「……ありがとね」

そう言って頭を何度かぽんぽんと撫でてやると、まるで飼い慣らされた猫か何かのように、嬉しそうに目を細めて満足そうにしている。
本当に、不本意である。





この気持ちを言葉にしてみたら存外、綺麗な響きで驚いたなんて

120628
甘えてくる紫原と気付き始めた先輩

タイトル、3/19
少し語尾を変えさせていただいてます
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -