どこへ行っているのかなんて知らない。何をしてるのかなんて知らない。別に知りたいとも思わない。突きつけられた事実はただ単純で。

「……何泣いてんだよ」

「あ、おち……エドおかえり」

「今なんつった?まさか小さいとか言おうとしてなかっただろうな?ま、さ、か!」

小さいだなんて言ってないわと否定すれば、エドは手袋を外しながら何かぶつぶつ言っている。

「おちびさんて言おうとしてたのよ」

コートを脱ぎにかかっていたエドは、その手を止めた。

「黒髪の少年がエドのことそう呼んでて可愛かっ」

錬成反応の光が空を駆けたので、もう言わないことにした。いいじゃない、私より大きいんだから。

「で、何で泣いてたんだよ」

気遣ってくれてる言葉。
なのにこっちを向いて言ってはくれない。ねえ、ほんとに心配してくれてるの?あなたが照れ屋なことなんて知ってるし、無駄に強がりなことも知ってる。けどね、時々不安になるんだよ、私だって。泣きたくもなるんだよ。エドにもっと愛されたいって、そんな陳腐なことを思うときだってあるんだよ。絶対にエドには分からないんだろうけど。

「小説読んでたの」

「は?小説?」

「もしかして知らないの?小説」

「あほか、知ってるよ」

「ああ良かった」

「馬鹿にすんな」

「私がエドを馬鹿にするのは、身長についての時だけですー」

「お前ほんと何なの?」

「安っぽい恋愛小説読んで泣いてたあなたの彼女様です」

「彼女様とか……ジイシキカジョー」

「憐れんだ目で見んな」

「てかさ、何で安っぽい恋愛小説なんかで泣けんだよ。まじお前意味不明」

「……何でだろうね」

そう言ったら、意味分かんねーとか言いながらエドは机に向かって、難しそうな本を広げだした。こうなったら、話しかけることは不可能に近い。私より本か。もう本と付き合っちゃえばいいよ。そう、突きつけられたのは単純明快な、淋しいという事実だけで。


ああ何だか、安っぽい恋愛小説が読みたい気分だわ
(気付け、ばか)


*****
出来の悪さが半端ないね!

091107
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