「千里くん、千里くん」 名前で呼ばれるのは久しぶりで、俺のこつ呼んどるって気付くんに少し時間が掛かった。その変な間に困惑しているような雰囲気が声ば発生源から伝わってくる。 「なあ……千里く、」 「なんね?」 「びっ、くりした。昼寝中やった?」 「よかよか。それより俺に何か用?」 「進路希望調査、あと出してへんの千里くんだけねんけど」 「ああそれ……。ばってん、なしてみょうじは俺んこつ名前で呼ぶと?」 「話すり替えんなや」 さすが大阪。こぎゃん女子でもツッコミ標準装備たいね。 「しかも名前で呼んでないし。そこまで親しくないやん」 「まぁ親しくはなか」 「やから名字で呼んどんねやんか」 「いや、名前で呼んどる」 「名前は千歳、やろ」 「……」 「えっ。千里千歳、やろ。フルネーム」 「……違う。俺んフルネームは千歳千里たい」 「……ほんま?」 「ホンマ」 嘘やん、と小さく呟いたかと思えば、大袈裟に頭を抱え、大声で叫ぶ。まっことせからしか。 「うわあああ、ごめん! ずっと千里千歳やと思っとった!」 「別によかばい」 千歳くん千歳くん千歳くんと、呪文のように俺ん名前ば繰り返す姿が妙にむぞらしか。 「みょうじ」 「なに?」 「みょうじには千里って呼んでほしか」 林檎飴の紅に成り済ます ***** 似非熊本弁ですいません。関西弁の台詞を書くときのスムーズさと、熊本弁の台詞を書くときのスローさの対比が激しかったです。熊本弁いいですね、可愛い。比べると関西弁は雑っぽい感じがひしひしと…いや、関西弁大好きですが。 タイトル、3/19 101127 |