「謙也、泣いて」 「頭おかしなったんか?」 「なってない。通常運転中やわ」 「いや、ぼろぼろ泣きながら言われても」 「ドライアイやねん」 「まじか」 「ちゃうわボケ」 「ノッたったのに」 「……なあ、泣いて」 「ムリ」 「なんで」 「みんな精一杯やって負けたんや。そんなみんなを責めるようなこと出来ん」 「みんな頑張っとったんなんか分かっとる。せやかて悲しいやん、悔しいやん」 「泣いたってしゃあないやろ、ほら笑え」 「なんで謙也はいっつも他人のことばっかなん」 「そんなことないわ」 「もっと自分の気持ち優先させてええやん、わがままなったらええやん」 「……千歳と代わったことか?」 「それも」 「相手手塚やったやん。あんなん俺にどうせえっちゅーねん。千歳で良かったやろ、あそこは。正直ベンチで俺交代して良かった思たもん。めっちゃ怖いし、びびるっちゅー話や。あの財前が打たれへん球やで? どんなんや。ああほんま、俺がやっとったら五分で負けとったやろなあ」 「アホ、嘘つき」 「お前なあ」 「泣くほど悲しいんやったら、悔しいんやったら、素直にみっともなく泣けばええねん。心配せんでも謙也は元々そんなかっこよくないねやし、ヘタレってことも周知の事実やねんから誰も今更笑わんわ」 かわいたなみだ 梅雨時の髪の毛 はねる、明日へ 悲しくったって 悔しくったって 世界がどんなに不条理でも私たちは前へしか進めないそういうルール 101220 |