「もしもし?」

「イ……ルミさん?」

「うんそう」

「びっ、くりした」

「何で」

「分からないんですか」

「うん」

「一体何ヶ月ぶりだと思ってるんですか。急に消えて、電話番号も変えちゃってて連絡先分からないし、この数ヶ月私がどれだけ涙を流したか、イルミさん知らないでしょう」

「確か11ヶ月ぶりかな。君がどれだけ涙を流したかは分からないけど」

「事務的に答えないでください」

「……じゃあついでに事務的な連絡ね」

「はい?」

「俺の家のメイドが一人死んじゃってさ。あ、俺が殺したんじゃないよ。それでメイドが一人必要になったから君、やりなよ。明後日の午後四時にそっちの空港に着くから必要最低限の荷物まとめといてね。それから今の君の職場にはもう電話しといたから、本日付で辞職しますって。今住んでるとこの引渡しは自分でやってね。あと、」

「ちょ、ちょっと待ってください」

「何? ここまでの連絡が理解できないなんて馬鹿な発言は止しておくれよ」

「言葉の意味は理解してます。けどっ、何で私がイルミさんの家でメイドとして働かなくちゃいけないんですか。そうなるに至った経緯が理解出来ません。11ヶ月前、私のことなんてどうでもよくなったから姿を消して、連絡も取れないようにしたんですよね!? なのに今更……」

「今更、後悔したんだ」

「後悔?」

「そう。俺、まだ君に対する興味が消えてなかったみたい。これ心外な事実なんだけど」

「……」

「君をこっちに呼ぶことになった経緯なんて、ただ俺の要望だったからだよ。他に理由でも必要?」

「ひどいですそんな。身勝手」

「事務連絡の続きだけど、住居は城の中に用意するから心配ないよ。ていうか、俺の部屋でいいよね。明後日は仕事があるから迎えにいけないけど、執事が上手く取り計らってくれるはずだから。何か質問は?」

「……」

「ないなら切るよ」

「……イルミさんは」

「ん?」

「イルミさんは私の気持ち分かってるんでしょう? 私もうイルミさんの我儘に付き合うのに疲れました。飽きたら何でもないゴミみたいに置いてかれるなんて、もうまっぴらなんです、嫌なんです。
私は、イルミさんが好きです。もうこの気持ちを無視したままイルミさんの側にいられそうにありません。でもそんな気持ちを抱えた私なんて、イルミさんにとっては鬱陶しいだけでしょう。だから、もう、お願いですから忘れさせてください」

「11ヶ月」

「え?」

「明後日で12ヶ月になる、君を置いて行ってから。一年経つんだ」

「それがどうかしたんですか」

「一年同じ女に興味持ち続けるなんて、初めてなんだよね。本当にらしくないっていうか、イレギュラーなわけ」

「はあ」

「それだけじゃ足りないのかい?」

「……全然足りないです。私欲張りなんです」

「じゃあ尚更俺のところへおいで。君のその物足りなさを埋めてあげる」

「……また置いていくときは?」

「丁寧にくるんでリサイクルに出してあげる」

「……」

「……」

「……」

「……」

「はあ……分かりました。お世話に、なります」

「まあ、拒否権なんて端から君に与えてはいないけどね」



さよなら以外の愛の言葉を



111229
恐らく今年最後のお話。
こんなにがっつり書くつもりはなかったのですが、ついつい……キャラ違ってたらすいません。
タイトル、あもれ
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