※ばら/かもん ※ヒロの将来を勝手に捏造してます。注意。 「よう」 「……ヒロだ」 なんだよそれ、四年ぶりに会ったのに素っ気ないな。って、言おうとしたのに。 いきなりぽろぽろと大粒の涙を落とし出したから俺はただただびっくりして、慌てるしかなかった。 やっとのこと泣き止んだ彼女は赤い目を細めて微笑みながら「おかえりなさい」と言ってくれた。 「なんか逞しくなったね」 「そうか?」 「うん」 島を歩いていると、もはや親戚みたいな島民のみんながひっきりなしに声を掛けてくる。 彼女はその光景を嬉しそうに見ていて、俺は早く彼女と二人きりになりたかったけれど段々と何かどうでもよくなってきた。 だってこれからは、毎日会える。 「パンチが魚くれたから俺ん家で食う?」 「うん食べる」 「刺身、だよな」 「ご名答」 島を出る前からある程度魚はさばけたけれど、四年間でより手際よくさばけるよいになった。そんな俺の手付きを見て彼女は感嘆の声をあげている。 「にしてもさあ、よく四年間も耐えられたよね、お互い」 「そーだなあ」 「私さ、絶対に遠距離なんて無理だと思ってた。いつかは自然消滅みたいになっちゃうんだろなあって」 「残念だったな」 「うん。まさか四年間も続いちゃうなんて。まあいっぱい喧嘩とかしたけどね」 「はい、できた」 「わー! 美味しそう!」 「……どう?」 「絶品! ヒロと結婚したら毎日こんな美味しいもの食べれるんだろなあ」 「ははっ、なに言ってんだよ」 「えー、これでも誘ってるんだけど」 「……」 「私はさ、ヒロのこと好きだよ。大好き。ヒロとじゃなかったら四年も離ればなれなんて耐えられなかったと思うもん。会えなくても、寂しくても、つらくても、それでもそれを乗り越えてまたヒロの隣にいれるようになりたいと思ったの」 「ちょ、待って。それ以上かっこいいこと言うな。俺の面目なくなる」 「あはは、ごめん」 「あの……さ」 「ん?」 「えーっとな」 「うん」 「だから、その、」 「はやく言わないと私が言っちゃうよ?」 「ちょっ! 待って!」 「はい深呼吸ー」 「……結婚してください」 「……真っ赤」 「仕方ねーだろ! それより! 返事!」 「……よろしくお願いします」 「あ、うん……こちらこ、そ?」 「ヘタレだなあ全く」 「はいはい。なあ、ベタベタのベタだけどさ、目ぇ閉じて」 「え、なに?」 「いーから」 「……」 「まだだぞー」 「……」 「はい、おっけー」 「……」 「……気に入らない?」 「ち、ちがっ!」 「じゃあなんでノーリアクションなんだよ」 「いや、びっくりしちゃって。まさか指輪くれるなんて予想もしてなくて」 「ベタベタのベタっつったじゃん」 「だって、さっきのプロポーズだって私から仕掛けたようなもんで、流れで……」 「あのなあ! 流れでプロポーズなんかするわけないだろ」 「そ、っか」 「ちなみに」 「?」 「俺は四年前に島出たときから、島に帰ったらお前にプロポーズしようって決めてたけどな!」 「ごめん、さっきのヘタレっての撤回」 「そりゃどうも」 「どうしよう、めちゃくちゃ嬉しい」 「そんなの、俺もだって」 「しあわせ」 「十年後も、その先もその言葉が聞けるようにがんばるわ」 「うん、がんばって」 「お前は?」 「私はヒロが隣にいたいと思えるような奥さんであり続けたいな」 「おう、頼む」 110613 |