「何で助けに来たのかだって? 俺がお前の右腕だからに決まってる」

「だあああかっこいい!」

「……金ちゃん、マネージャー、何やっとん」

「あ、蔵!」

「さっきの何なん? 右腕がどうとかのん」

「あーあれな! 昨日発売やった漫画の台詞やねん。めっちゃかっこよない?」

「ワイ昨日一人でめっちゃ興奮してもたわあ」

「私もー」

「楽しそうでええなあ」

「……決めた!」

「どしたん、金ちゃん」

「ワイは白石の右腕になる」

「え……」

「えー! ずるいわ!」

「ワイが初めに言うたんやもん! マネージャーは白石の左腕な!」

「ずるいずるい。私やって蔵の右腕になりたい!」

「右腕はワイや!」

「代わってえな」

「イヤや」

「金ちゃんのアホ」

「マネージャーのアホ」

「ああもう自分ら喧嘩すんなや!」





「まだ拗ねとん」

「……拗ねてへんし」

「ええやんか。右腕左腕くらいで」

「やって! 蔵の右腕なりたかってんもん……。蔵のこといつでも助けられる、蔵から頼りにされる存在になりたかってんもん」

「(こいつ、自分が可愛いこと言うとる自覚あるんやろか)あーはいはい」

「ちょ、私真面目に」

「嬉しいで? 自分がそんな風に俺のこと思っとってくれて」

「ちょ、ん……」

不意を衝いて唇を重ねる。つないでいた手から体温が上がったことが分かった。
離れることを惜しむようにゆっくりと唇と距離をとって、お互いの顔を10センチほど離したところで微笑んだら、彼女は恥ずかしそうに視線をずらす。

「それに俺左利きやから左腕の方が嬉しいし」

「あ、そっか……」

「まあでも、俺としては左腕っちゅーポジションより恋人のポジションでおってくれた方が嬉しいんやけどな?」

110518
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