白石のバカヤロウのせいで千歳と同じ部屋で一夜を明かすことになってから、恥ずかしいけれどドキドキが全然収まらない。

「なー」

「ちょ! なんで上半身裸やねん!」

「風呂入ろうとしとったよって」

「じゃあさっさと入ってきて!」

「いや、お前さん先に入りたいかなーち思ったんやけど」

「いいいいから! 早くバスルームに行ってください!」

「もしかして、意識しとっと?」

そう言ってその格好のまま私が腰掛けていたベッドの隣に座ってくるもんだから、私の心臓はより一層その動きを速めた。
この確信犯め……!

「上半身裸くらい部室でいっつも見とっとやろ?」

「今は状況違うやん」

「やっぱり二人っきりってこつ意識しとるんやね」

「……してへんし」

「顔真っ赤」

「もー! はよ風呂行ってこいこの変態っ!」

ひどかー、とヘラヘラ笑いながらバスルームへ行ってしまった千歳の背中が見えなくなって、枕に顔を埋める。
布擦れの音が耳につく。シャワーを捻る音とか。
部屋に二人きり。中学生の男女。彼氏と彼女。意識しないわけがない。寧ろどうすれば意識せずにいられるんだ。

「千歳の阿呆……」
顔を向けた先にあったリモコンを手に取る。テレビでも見てればちゃんとは気が紛れるだろう。そう思ってテレビを付けたら、偶然にも千歳が好きなジブリアニメがやっていた。
枕を胸にきゅっと抱え、ベッドの上に胡座をかく。
何だかんだ言うても私は千歳のことが好きやから。千歳が好きなもの。私だって見てみたい。

「あ、この猫可愛い」


100315
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