好きな人、もとい彼氏と初詣なんていうのは初めての体験で、家族と一緒の時には経験する筈もない「ドキドキ」に私は見舞われていた。
そんな中、いつものポーカーフェイスを少し紅潮させた財前が目をキラキラさせて指を指した先にあったぜんざいのまかない。行きましょう、と半ば強引に掴まれた手も今は離れてしまって寂しいばかり。
その代わりなのかどうかは分からないけど、二人の耳は今一つのイヤホンで繋がれている。思ったより長かったぜんざいの列に退屈してきた私を気遣って(本人には自覚ないんだろうけど)財前が差し出してくれたものだ。脳に流れ込んでくるハードなロックが気持ちいい。

「あ、ごめん」

ちょっと身を捩った反動で私の耳にはまっていたイヤホンが外れて宙にだらんと垂れ下がった。これが一回なら、何てことなかったのだ。

「あああ、ごめん!」

「……先輩何回目やねん」

「ほんまにごめん」

「アホちゃいますか」

寂しかった手が何かに包まれた。それが財前の手だと分かって彼の方を見上げたら、ほぼ同時に顔を反らされた。

「もっと距離詰めたらええだけの話っスわ」

相変わらずガンガンと頭に響くギター。微糖じみた私たち。

「あとちょっとやな」

「やっとか」

「美味しいかなあ」

やっとこさあと二組で私たちの番。そんな時に無情に響き渡ったオジサンの野太い声。

「すいませーん!ぜんざい終わりでーす!」

嘘やろ、生気の失せた呟きが隣から聞こえた。

「財前?」

「これだけ並んで結局食べられへんやて?フザけとん?え、初めて部長のエクスタシー聞いた時以来やでこんな衝撃」

「財前、キャラ壊れっ……!」

「ぜんざい……」

「まあほら。私らの目的はぜんざいちゃうんやし、また帰りしに自販機で買ったらええやん。な?」

「あと二、三組早かったらゲット出来とったのに」

……この子ぜんざいのこととなるとめんどいわ。


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