見てしまったのだ。青峰っちが楽しそうに笑う姿を。見てしまったのだ。その隣に黒子っちがいる姿を。いつもだったら笑って中に入るのに、今は何故かそれが出来たなかった。その代わりに涙が溢れ出てきた。理由は分からない。ただ、ただ悲しかった。青峰っちは俺のなのに、とか今までなかった独占欲まで溢れてきて、このままじゃ青峰っちに顔見せできない。そう思った俺は二人に背を向け体育館に向かう。もう部活は終わってしまった為誰もいなかった。溢れ出る涙に見ぬふりをして制服を脱ぎ捨てる。畳むなんて面倒なことはしなかった。鞄の中に入っていた洗濯したての香りがするTシャツに身を包む。青峰っちの家に泊まったときに忘れて帰ったもので俺の身体からは青峰っちの匂いがする。そんなことにすら涙腺を刺激される俺は本当に弱い。バスケットボールを手に取り、がむしゃらに走る。シュートを打って、外して、また打って。こんな姿を赤司っちに見られれば酷く怒られるだろう。それ程までに酷いと俺も自覚している。けど止められない、息がどれだけ乱れても止められない、止めたくない。今止めれば青峰っちのことを考えてしまうから。

「…黄瀬。」
ほら。余計なことを考えたから空耳まで聞こえてきた。青峰っちは今頃黒子っちと仲良く帰っているのに。無心になるようにひたすらドリブルを打つ。そしてシュート体制になった瞬間、青い髪の誰かがディフェンスが入った。そして

「ちゃんとこっち向け、黄瀬。」
愛しい、愛しすぎて狂いそうなぐらいに大好きな、青峰っちがいた。

「…な、んで。」
声が震えているのはがむしゃらにバスケをしていた所為にして、涙は汗で分からなくなって。これなら普段の俺でいれるだろう。一瞬見せた不安げな顔を振り払うようにいつもの笑顔を見せる。

「あれー、青峰っち、黒子っちと帰ったんじゃなかたったんスか?」

へらへら笑う顔はいつもと同じだった筈。それなのに眉間にシワをよせ、怒ったような、困ったような表情をする青峰っち。そんな青峰っちの腕に引き寄せられるように胸に顔を押し付けられ、頭を撫でられた

「んな顔すんな。…俺がテツと話してんの見たんだろ。嫉妬するお前は可愛いけど、そんな嫉妬するだけ無駄だろ。」


「−−−−。」

最後の一言で涙が溢れてきた。青峰っちはちゃんと俺の気持ちを分かっていた。俺の独占欲も、嫉妬も、何もかも。好きだけじゃ伝えられないぐらいに好きだってことも。そんな俺をちゃんと受け止めていてくれた。有難う、それだけじゃ伝えられないけれど、今一番伝えたい言葉はそれだった。俺は青峰っちを精一杯抱きしめた。


「−−大好きっス。」



するだけ無駄な嫉妬を繰り返すのはどうしようもなくきみが好きだから
君が俺を愛してくれていることなんて分かりきってる筈なのに。





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