Dream novel*short



部長交替

「─3年間、お疲れ様でした」


「─今日はあんなに豪華な引退式を開いてくれてありがとう、赤也」
男子テニス部の引退式が終わった後の帰り道。
大きな花束を抱えた幸村は切原に微笑みかけながら言った。
隣を歩いていた切原は、服の袖で乱暴に涙を拭きながら答えた。
「─ホントは引退なんてしてほしくないっス……」
「ダメだよ、これから立海を引っ張っていく人間がそんな弱音を吐いちゃ」
幸村が苦笑しながら言うと、切原は唇を噛みながら言った。
「なんでそんな笑ってられるんスか……!?」
「……赤也」
「だって青学なんかに負けて、はい残念でしたってあっさりと引退するんスか!? 悔しくないんスか!?」
勢い良く顔を上げ、噛み付くように言う切原を静かに見つめていた幸村は、ゆっくりと口を開いた。


「─悔しいよ。物凄く。勝ちたかった、と今でも思うよ」
それを聞いた切原は、強く歯を食い縛りながら、
「……もう一回やり直せれば……全国大会より前に時間が戻れば良いのに……っ」
そう呟いた。

すると、
「ふふ、赤也は俺に、もう一度入院して来いって言いたいのかな?」
幸村が、どこか楽しそうに言った。
「、違─っ」
「俺は、戻ってほしくないかな」
「─え?」

切原が目を丸くしながら幸村を見ると、元部長は微かに目を細めながら続けた。
「せっかく皆で歩んで来た道なんだ。結果がどうであれ、やり直したくなんかないよ」
「……歩んできた……道……」
「それに今では、もしかしたら俺達は全国で負けて良かったのかもしれないと思ってる」
「……え?」
「あの時の俺は、試合に勝って……3連覇をする事しか頭になかった」

そこで初めて、幸村の笑顔が一瞬曇った。
「もしあれで勝っていたら……きっと俺は、何も得られなかったと思う」
勝つ事が全てとしてきたからこその“常勝立海”。
それを根本から覆すような事を、幸村は言ったのだ。
「─赤也には、この経験を生かして次に繋げてほしいんだ」


切原は、一度は止まった涙を再び流しながら声を絞り出した。
「でもやっぱり俺は、まだ部長達にいてほしいっス……っ! まだ、幸村部長達にも勝ててないのに……っ!」
すると幸村は、驚くほど優しい仕草で切原の頭に手を乗せ、言った。
「俺達より強い人間なんて腐る程いる。何も俺達ばかりを追わなくても良いんだよ」
「俺は─、俺は幸村部長達が良いんスよ……!」
「─俺はもう、部長じゃないよ」
子どもの様に泣きじゃくる切原から手を離しながら、幸村は静かにはっきりと続けた。
「次の立海を支えるのは──、」



切原部長、お前だよ
(今までに)(得たモノ)(全てを)(お前に託すよ)



立海の3年生が引退する話を書きたくて出来た話です。
とにかく、立海の引退式とかは感動なんだろうなーと思って。
というか、レギュラーメンバーで唯一残される赤也の寂しさは物凄いでしょうね。
・・・まあ、OBとしていつでも会えるんだろうけどさw
とにかく、赤也の可愛さを重視して書いた話←



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -