ただしい大人のだましかた
※猫かぶり七峰の腹黒 ※オチがあきらかになる前にやらかした捏造
人を支配する方法は三つある。力による弾圧。金による誘惑。情による脅迫。漫画家と担当編集者という関係において、力尽くして弾圧すれば問題になりかねない。金を振り撒こうにもただの学生であるオレには財力はない。ならば三つ目に挙げた方法がイニシアチブを獲得するには適しているだろう。 なんて扱いやすい大人なんだろう。こっちがへらへらしていればすっかり安心している。一緒漫画を作っていこう?ばかか。オレはお前なんかと一緒にやるつもりはない。オレはオレのやり方でやる。だからお前はオレに従えばいいんだ。 「小杉さんってかわいいですね。…って大人に、しかも担当さんに失礼だったかなぁ。でも僕、なんだか小杉さんといるとドキドキするっていうか!これって恋ですかね!」 心にもない薄い人格の上に乗せた口説き文句でばかな大人は俯く。おいおい、童貞じゃないだろうな、なんて馬鹿にしたくなるが今の七峰透はそうはしない。 「小杉さん?すみません!変なことを言って!気分を悪くしました?水とか飲みます?」 小杉は首を左右に振って、顔を上げた。赤い。 「大丈夫、…だけど、七峰くん、あまり他人にそういうことは言わない方がいいよ?」 なんだこいつ。本当に成人してるのかと疑いたくなる。子供みたいな声で女みたいに弱々しい顔つき。オレは運がいいけど担当はハズレだ。 「そうですね!わかりました!小杉さんにしか言わないことにします!」 血液が全部集まってるみたいに顔の赤い小杉の肌の白さに気付けば自分の鼓動がやけに早かった。なんだこれ。 小杉が不器用に笑って今日はこれまでにしようか、と席を立った。目が小杉を追って一瞬体が動かなかったが七峰透は元気よく挨拶をした。 「ありがとうございました!ネームができたら小杉さんに会いに来ます!」
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