隠し事ふたつ

※隠し事ひとつの続編



 締め切り明け、原稿を朝一番に編集部まで持って行って帰り。二人とも体力は限界。サイコーに至ってはもう24時間以上眠って居ない。即行で家に帰って寝ようぜ、なんて声が聞こえたあとガタガタと揺れる電車の音だけが残った。ラッシュには早い時間。まだ白い朝日が窓から射して眩しい。車内は普段がら空きでこの車両にはサイコーと二人きりだった。欠伸を一つ溢し、サイコーにお疲れさまと声を掛ければ小さな肩は背もたれに沈み首は窓に反ってすやすやと寝息を立てる寝顔があった。
「…すげぇ頑張ってたもんな。」
 数時間前まで仕事場でペンを走らせていたそのまだ幼さの残る手は指先にインクのシミが残っている。色の薄い唇は浅く開いて閉じた瞼を緩く巻いた睫毛が彩っている。反らした首はすらりと滑らかで白い。ああヤベェな…なんて思いながらサイコーの寝顔を見ていれば喉が鳴って身体が熱くなった。
「…シュー、ジン。」
 小さな唇がむにゃむにゃとオレを呼んでインクの付いた手がトーン屑のついたオレのシャツを引けば耳の横で心臓が弾けて理性が吹っ飛んだ。
 ずっと触れたいと思っていた頬を撫でて唇をそっと重ねる。キスなんてしたこともないし興味も無かったからどうにも出来ずにただその温もりに手が汗ばんだ。
 何時間にも感じられた数秒後、車内アナウンスがまもなく駅へ到着することを告げれば理性を総動員して唇を離しサイコーの肩を叩いて起こした。いつもの友達の顔で。
「サイコー、着いたぞ。」
「う…ん?あれ、オレ寝てた?」
 寝惚けて目を擦るサイコーを直視したらまた理性が吹っ飛びそうな気がして慌てて立ち上がった。帰ったら寝よう。きっと、疲れでおかしくなってる。




090418
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