アンダルク

※あくまで逸→千






 ならば私は死神を憐れむ魔女になろう。死神に魂を食われてもいい。死神を作ったのは私だ。だから最期は私がきちんと殺してやる。
 ついに死神の瞳は色を失った。皮肉だ。闇に飲まれているのにその体躯は光を現すように闇を失っていくのだ。闇には溶け込まない肌が死神を作っていた。
 私に懐いたかわいい教え子四人は無惨にも壊れて一人は笑い、一人は怒り、一人は泣いて、一人は死んだ。
 死んで神をも恐れぬ力を手に入れた一人は死神として生きている錯覚に満足していた。怒った一人は死神を許さないだろう。死神を思えばこそ許すことができないだろう。死神は怒る意味を理解出来ず死んで、更に身を裂いて死のうとする。泣いた一人は怒る一人の為に泣く事を止めたが怒る一人は止めなかった。
 死神は感情や友情や愛情や慕情を薄情にも無情にも死なせていて、誰の言葉にも首を傾げ、挙げ句、これでみんな幸せになれるんだよ、と言った。
 全てが壊れた。死んだ。終わった。けれどこの地が私の足を離すことはなく、この惨状を見せつける。全ては私のせいだ。それがメタファにあるにしても、きっと教え子たちも同じ事を思い壊れたのだろう。
 死神は体を巣食い、まるで生きている様に微笑む。死神が誰も愛せない。なのに愛情がある様に振る舞って人真似をする。人真似のまま成長していく。
 ああ、そうだ。私は死神を許して甘く惑わそう。幸い彼は私を好いている。人真似がどこまで真実なのかわからないが。闇に食われた美し過ぎる瞳を擽り、私のありあまる愛を無下にすればいい。あの教え子もあの教え子もあの教え子もあの生徒も、死神を愚かにも愛しているのに、死神は気づけず、孤独に飢え死ぬだろう。

「やあ、逸人くん。ちょっといいかな。頼みたい事があるのだけど。」

 死んでいる死んでいる死んでいる死んで、居る。不気味な一人芝居の様な自分の声がいつだって君に届くのか、音速がたどり着かない早さで恐ろしい。
「また、病魔ですか。」
 闇に飲まれながら闇に溶けない姿が揺れて振り返る。死んで、居た。居た。安堵で出た声で死神が死んで終わないように努めて冷めた声で続ける。
 光に照らされれば姿が消えて仕舞うように思って、これが闇の報復だと知った。




100929
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -