セラメンツ
※逸←藤→←アシ
ずっとずっと。好きだったんだよ。僕みたいに重力に逆らえない地球人とは釣り合いの取れない軽い身のこなし。憧れは君というただの人間を知れば知るほど、浮ついた感情が消えて肉の付いた重さに変わった。まるで君は死神にとりつかれたみたいに、苦しそうにすることがある。ああ、あの死神の友達と同じだ。絶望して悲観している。叶わないんだね。けど僕は、君を救ってはあげられない。ごめんね。ちゃんと素直に好きだって言って、抱きしめてしまえば死神の呪いだって解けるかも知れないのに。僕は地球人で、重力が全てで、重力がない世界に行けないんだよ。 「アシタバ。オレ、お前みたいな奴と結婚したい。」 「そんなこと言ったら女の子が悲しむよ。」 ほら、君が腕を伸ばしてもはぐらかす。僕はきっと君より綺麗じゃない人と結婚して君より興味のない家庭を築いて君より幸せそうに死ぬよ。 「アシタバ、わかれよ。」 「なにを?」 「好きなんだよ。」 「…。」 僕が重力に逆らって生物として間違った選択をして君を受け入れれば僕は一時も持たずにしぬよ。だから、これは錯覚だし、知らないよって言って忘れてしまうんだ。 「藤くん、困らせないで。」 死神はだれだっけ。 「わかるよね。」 どうして僕は、彼を殺すことしかできないんだろう。
100826
|