捨てる男

※下品すぎるのでR15
※続編かくかも






 全部ぐっちゃぐちゃで皮膚がなくなったみたいに中身が溢れてる。死にたいのか。死にたいのか。聞いても答えはないのだけどどうしても思考はそこに行き着く。死ぬことは難しい。知っている。僕の純粋だった瞳はあの日に血を吸ったのだ。身体に所有感がなく、他人の様に感じる。ならばどうなっても構わない。男だから尚更だ。女の様に孕むのなら面倒だが男は出すことしか出来ない。捨てることしか出来ない。だから僕はなんだって捨ててきた。友達を捨てて実家を捨てて女を捨てて、社会を捨てた。人間も捨てる。身体も捨てた。命だけは捨てていないらしく生きている。エイエム3時。
 ワンコール。呼び出し音がぷつりと途切れて留守番電話に切り替わる。こんな時間だから眠っているらしい。機械的な女の声では抜けず通話終了。寒い。そういえば一月って冬だった。半ば習慣で毛皮のコートを纏っていたがその下は部屋着にしていたシャツにサロペット。毛皮からはみ出した足は冷えて膝が硬い。
 何もかも捨ててきたのに僕は新妻に捨てられた。新妻と言うのは苗字で、男で、気の触れた様な漫画家である。彼は快楽主義者で楽しむ為ならば僕とセックスした。掘られる日が来るなんて思っても見なかった。自らを晒され暴かれ殺されてしまう感覚に僕は酔った。原稿を上げては新妻を訪ね獣の様なセックスに身を委せた。それを続けて二ヶ月目の先週、飽きましたとはっきり告げられ、今はセックスより漫画が描きたいです、と言われて触れればジトリとした視線で邪魔だと訴えられた。
 今日だって原稿を上げ漸く呪縛から解放されたのに新妻の家に行くことはできない。理不尽だろう。僕の排泄器として必要のない拡がりを見せるこのケツの穴はどうすればいい。ソープに行っても欲求が果たされる気はしないし、ゲイ御用達という発展場で知らない男に穴を埋められたくもない。新妻という男に固執しているかと言えばそうではないと思う。例えば真城くんくらいならいけると思う。けど真城くんには彼女さんが居てややこしい事になりそうだし、いきなり僕が現れて抱いてくれなんて言っても顔をひきつらせるだけだろう。なにか。僕は若くて小さめの男に犯されたいのか。変態じゃないか。男が行けるって時点で変態かも知れないが。結局、僕の願望を叶えてくれるのは新妻で、でも新妻に捨てられて、行き場所もなく彷徨っている。
「あ、平丸先生遅かったですね。」
 目の前には白い息を吐く新妻がいた。いつものスウェットに半纏を着て、何でもないように僕を呼ぶ。
「新妻、何で…。」
「平丸先生こそ、来ないから少し心配しました。」
 新妻のマンションの前だった。タクシーで近くまで来たけど無意識に足はここに向かっていた。新妻は良く分からないポーズを決めてから僕の腕を引いた。
「漫画はいいのか。」
「カナリかいたので今日はお休みです。あ、それと寒いので入れてください。」
 毛皮のコートの留め具を外して新妻は僕に抱き付いた。僕は言われるままにコートで新妻ごとくるんだ。
「平丸先生は僕に惚れてるですか。」
 何と突拍子ない質問だろう。新妻という人間はいつも宇宙と交信しているのか。
「と言うより、僕のセックスが好きなんですね。」
 質問に自分で勝手に答えて新妻は納得する。僕はそんなことを一言だって言ってないのにどういうことだろう。腰に回っていた新妻の手がいきなり尻を掴んで揉んで思わず声を上げた。
「僕はセックスに飽きました。平丸先生がもししたいなら僕をその気にさせてください。どん!」
 効果音を添える新妻に理解が及ばず目を丸くしていれば唇を重ねられて服の上からケツの穴を突かれた。驚きで身体が跳ねれば新妻がにたりと笑って唇を離した。
「僕を惚れさせてください。」
 僕は死ぬのだろうか。新妻のその笑顔に血液が目まぐるしく全身を熱くして心臓が破けそうだ。捨てることしかできない僕の身体に何かが宿った気がした。




100309
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -