終わりの見える日常

※藤独白






 アイツは本当に本当に真人間で、大きい猫背さえ真っ当で、背負わなくていいような宿命でいて、誰も受け入れるクセに誰も傍に置かなくて、それはきっと誰かに迷惑になるとか、辛い思いをさせるとか、そう言った考えからなのであって、アンタとならオレは何があっても平気だと思うけど、言ったところで、きっとアイツは拒絶して、自分は不釣り合いだとか、君の幸せを願うとか、そういうアホみたいなお人好しを押し付けて、オレを傷つけて、でもお人好しはオレを傷つけるって知ってて、オレの倍は傷ついて、人知れず心を痛めて、誰にも気付かれないように、ひっそりと泣いて、でも大人で在ろうとして、教師で在ろうとして、ちょっと無理をして、無理を無理じゃないと思い込んでて、無理をして、泣かないで、笑って、怒らないで、笑って、笑っても不気味だけど、笑って、でかいのに、細くて、しっかりしてるのに、弱そうで、人一倍他人を思って、人一倍臆病で、人一倍自己犠牲心が強くて、教師らしくて、教師らしくなくて、生徒のオレに放っておけないと思わせて、でも一人で生きていけると思ってて、他人には、一人じゃ生きていけないよ、とか尤もらしいことを言うのに、そうだと思っているのに反面教師で、きっと好きな人に好きだと言ったことがなくて、人を寄せ付けないでオレより十数年長く生きてきて、きっと人を嫌ったことがなくて、でもきっと人に裏切られたことはあって、弱いクセに強くて、強いクセに弱くて、見掛けはハリウッドもびっくりのホラーで、でも実は甘い匂いがして、声は優しいし、オレが我儘にすれば聞いてくれて、オレが黙っていれば世話を焼いて、勘違いさせて、オレは好きなのに、アイツにとっては何でもなくて、オレは好きだから会いに来るのに、アイツはそうは思ってなくて、結局、距離を空けられるのが怖くて、オレは何も言わないし、アイツも気付いてないフリをして、オレは毎日保健室に通って、アイツはお茶を出して、それを飲んで、下らない話をして、胸に渦巻く綿飴みたいな気持ちと沼みたいな気持ちを押し込んで、欠伸をして、アイツをみんなが怖がって保健室になかなか寄り付かないことにホッとしてて、アイツは保健室に人が来ない事を悲しんでて、オレはこのまま誰もここに立ち入らなければいいと邪な考えでいて、何でもないフリをして、アイツの傍に居たくてベッドを占領して、二人で居ても教師と生徒の会話だけをして、平和な日常を保って、もし卒業したらなんて考えたくはなくて、卒業してもアイツはきっと真面目だからオレを生徒としてしか扱わなくて、何十年経ってもそれは変わらなくて、オレを生徒の一人として大切にしたがるだろうし、卒業したら会うことは困難になるし、卒業したくないのに眠っていれば一日が早くて、どれだけ一緒の空間で過ごしても足りないのに時間は早くて、毎日が終わって、毎日が始まって、いつまで繰り返すか、終わりが見える日常に、本当は眠れなくて、身長がいくら伸びて、アイツより大きくなっても、アイツはオレを別の目で見ることはなくて、変わらない優しさで、接していて、変わらないのは優しくなくて、オレは何も言えないまま、一人、想って、毎日、想って、想って、



100217
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