モノトニールーム

※「デニィドア」の続編だったりなかったり…。
※勢いでかいてる。
※いろいろ明らかになる前にやってしまおうってネタ。











「静河くん。」
 大体山久は昼下がりに来る。昼飯を食べてから来るのだろう。また雪の降る日だった。寒いだろう。僕の部屋は暖房が効いていたけど廊下はきっと冷えている。そう、気まぐれだった。ドアノブを下げて扉を少し開いた。山久は間の抜けた声で僕を呼んだ。僕は瞳に茶髪が映らないように目を伏せて部屋の真ん中に逃げ、テレビの電源を入れた。常に外部入力にしている画面は黒い。ゲーム機の電源を入れてたまたま二つあったコントローラの内一つを持った。
「…お邪魔します。」
 遠慮がちな山久の声と扉が閉まる音が聞こえた。山久は緩慢な動きで荷物を置いて僕の隣に座る。黒い画面にはメジャーな格闘ゲームのタイトルが浮かびキャラクターのプロモーションが流れた。
「静河くんって格ゲー強いの?」
 強いのか?わからない。誰かとしたことのないゲームだからどうだろう。とりあえず全クリしてるけどこのくらい普通なのかも知れない。結局どれも口に出ずに対戦モードを選択して一番使い慣れたキャラクターを選ぶ。山久は僕が答えなくても追及せずもう一つのコントローラを取って女性キャラクターを選んだ。
「お手柔らかに。」
 戦闘開始。
 山久は弱かった。練習モードをノーアクション設定でしているみたいだった。山久曰くゲームは好きだが得意じゃない、らしい。チャットではゲームの話についてきたから上手いのだと思っていた。やり込んで詳しいと言うよりゲームを知識として嗜むらしい。そういう人間もいるのか。
「静河くんはゲームが楽しいか。」
 楽しいだろうか。初めてPSを買ってもらった時は楽しかった。そのあと学校でGBAが流行って僕もそれで遊んだ。けど、どうだ。今は毎日毎日無限にある白い時間を黒く黒く、塗り潰す道具なのだ。何もない毎日と何もできない自分を塗り潰す道具なのだ。僕は山久と会話を成立させることができず黙った。山久はゆっくり立ち上がった。
「また、明日来るよ。絶対、静河くんが退屈しないような漫画を二人で作ろう。」
 荷物を持って山久は部屋を後にする。僕は座ったまま動かないでいた。一階で山久と母が何か会話していた。直ぐに玄関が開く音がして山久が帰ったと知った。立ち上がってブラインドの隙間から覗けば雪の積もった白い道を茶髪が歩いていた。
「退屈…、二人で…。」
 この4年は退屈だったのか。わからない。僕は何をしたんだろう。何をしていたんだろう。毎日、カレンダーの白い枠を黒く黒く塗り潰すだけ。カレンダーが黒くなれば、何かあったのか。わからない。
 雪に残る山久の足跡が見えなくなるまでぼんやり眺めていた。








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