デニィドア

※「ノティノック」の続きのような。じゃないような。
※いろいろ明らかになるまえにやってしまえ!っていうネタ。










 山久は毎日家に来た。扉越しに僕に話しかけて10分くらいで帰る。僕は毎日にその帰る背中をブラインドの隙間から見送っていた。登校拒否を始めたころ、担任教師が同じように扉越しに話しかけた。毎日来るから、力になるからと言った。だが教師は3日で来なくなった。そんなものだと思っていた。毎日なんて建前。誰も僕に期待しない誰も僕を必要としない。山久は、もうひと月も家に通って来る。漫画をかかない僕に漫画をかくようにと励ます。山久は仕事に真剣なんだ。

「静河くん。山久だ。今日は寒かったぞ。雪が降ってた。」
 やってきた山久は扉越しに話を始める。聞いているかもわからない相手によく続くものだ。
「今日はお土産に饅頭を買ったんだ。置いておくから後で食べてくれ。」
 山久は口が上手いし太鼓持ちであろう事は推測できる。僕との付き合いなんて、漫画を少し見てもらって、チャットしたくらいじゃないか。なのに毎日ここに来る?仕事の為か?仕事なら僕より才能があり十全な人間がいるだろう?ここに来るのは時間の無駄じゃないのか?
「山久、さん…なんで…。」 退化した声帯が震えて精一杯の言葉を吐いた。扉が隔てている。聞こえているかはわからない。
「僕は静河くんの才能を信じてるからだ。」
 山久の明るい声が返ってきた。
「僕はメリットのないことはしない。」
 途端に手が震えた。山久は、腹黒いだろう嫌なやつだろう人間味のある人間だろう。僕はそういう人間に裏切られてきた。なのに僕に期待する。そして僕も期待してしまう。
「じゃあまた明日。」
 山久は帰った。またブラインドの隙間から茶髪を見送れば一瞬、目が合った気がした。






100202
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