気になる直線

※髪フェチ安田
※友達以下の関係
※続くよ










 また、だ。本好の髪は長い。俯いてノートを写す時に耳にそれを掛ける。けれど本好の薄い耳は重力に直ぐ引き寄せられた髪を放してぱらりと垂れる。本好はまた髪を耳に掛けてノートを写す。邪魔そうだなあ。切ればいいのに。ぼんやりと考えたまま前方に視線をやれば先に板書された左半分が消され右下からの続きが綴られ始めていた。ヤバい。写してなかった。

「本好、悪いけど社会科のノート貸してくれ。」
 ホームルームが終わり教室の中は纏まりがなく騒がしい。帰宅するヤツ、部活に向かうヤツ、談笑するヤツ。オレは学校指定のカバンを肩から提げて艶やかな黒髪を追って声を掛けた。重力に従う直線が小さく揺れて振り向く、訝しく眉は寄せられ本好は冷えた声を吐いた。
「どうして。復習と予習をしなきゃならないから困る。」
 予習とか復習とか一度もしたことがないオレに大きな衝撃が走った。流石学年一の秀才様は次元が違う。
「その…、時間が足りなくて写しきれなかったんだよ。」
 写しきれなかったのは本当だけど足りなかったのは時間ではなく集中力。本好を見てたなんて馬鹿らしい理由は口にすることが躊躇われて半分嘘を吐く。オレって嘘が上手いのかも知れない。そんな嘘を吐いた所で本当に本好が復習をするのならノートは他人に貸せないだろう。色のない瞳がオレを捉えている。オレは癖毛を掻いた。
「貸すことはできないけど、ウチに来る?」
 本好は浅い色だけをちらつかせて言った。ノートを写したいなら、ウチで写せばいい。それだけ言って首を前に、廊下を歩き出し始めた。
「え、ちょっ…本好!」
 本好は答えないで歩く。オレはそれを追う。オレは本好と友達だと思っている。けど本好はそうではないらしく、前に一緒に遊ぼうと誘ったら不気味がって遊んでくれなかった。家に行きたいと言っても美作の話で濁された。だのに、本好に招待を受けてオレは戸惑っている。オレは本当にどうでもいい人間だから、家に入れても構わないのだろうか。静かに歩く癖に早い速度にオレは小走りで続く。歩調に合わせて揺れる黒髪がツヤツヤと光を捉えては逃がす。髪、綺麗だから切ったら勿体ないな、と至り若干考えがずれてることに気付く。いや、熱子みたいなくるくるの髪が一番好きだけどさ。
ぐるぐる頭をフル回転させながら着いた本好の家は、デカかった。







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