最低と言われた

※4話読んだ段階での暴走(本好くんが病んでる)








 美っちゃんは女の子が好きだ。いつも女の子にモテることばかり考えてる。オレは女の子が美っちゃんを好きにならないのは女の子たちが見る目がないんだと思う。美っちゃんは強いし優しいし面白いしカッコいいのに女の子たちはわかってないんだ。
「本好くん。あの、わたし…本好くんのこと、好き…なの。」
 ほら、見る目がない。そもそも誰だっけこの子は。くん付けってことは下級生ではないだろう。顔に見覚えがない、というか女の子はみんな同じ顔に見える。人気の少ない旧校舎に続く一階の渡り廊下。ここから美っちゃんの練習風景が一番よく見えるんだよね。
「前、委員会の時に本好くんがわたしの仕事手伝ってくれて。」
 そうだっけ?丸で覚えてない。委員会に女の子は居ただろうけど本当にこの子だったかな。顔をよく見ても思い出せない。なんだっけ、前に美っちゃんが好きだって言ってたアイドルみたいに目が大きくて色が白い。この子はきっと可愛いんだろう。オレを見上げて頬を染めながら一生懸命何か喋ってる。興味が湧かないし面倒。喋るのって苦手だ。言葉に付属する感情や意味合いを考えていたら胸焼けする。
「本好くん?」
 女の子が可愛いだろう声でオレを呼んで袖を引いた。美っちゃんはまだ球拾いかな。
「本好くんって彼女いるの?」
「……いない。」
 彼女?そんなもの要らないじゃないか。
「じゃあ…わたしを本好くんの彼女にして?」
 女の子がオレに抱きついた。意味がわからない。女の子は小さくてなんだか変な匂いがした。花?フルーツ?それが気持ち悪い。なんて言えば離れてくれるだろう?この子はどうしてこんなことをするんだろう?理解できない。この子はオレを好きだって言った。好きだから抱きついた?そういえば美っちゃんがこの子に似たアイドルを抱き締めたいって言ってたっけ。美っちゃんはこの子に抱き締められたら喜ぶだろうか。
 じゃりと土を踏む音が聞こえた。ふと顔をそっちに向けるとオレを真っ直ぐに捉えて立ち尽くす美っちゃんが見えた。見られた。焦る、胸が痛いどうしようマズイ。どうしてマズイ?美っちゃんが好きな"女の子"をオレが取った?嫌われる?それだけは、それだけは、美っちゃんに嫌われるのだけは嫌だ。
 力尽くでオレに巻き付いた女の子の腕を払って乱暴に肩を押して離した。女の子が目を丸くしてどうしたのと細い声で言ったのに答える変わりにその可愛いだろう顔を思い切り殴りつけた。
「本好!!!」
 美っちゃんの太い声が響いて見れば美っちゃんが怒りと驚きを交ぜた顔で走って来た。オレは美っちゃんに会えたのが嬉しくて笑って美っちゃん、と呼んだら美っちゃんに力一杯顔を殴られた。オレの細い身体は倒れて尻餅を着いた。
「なにしてんだよ、お前!女子に手ぇ上げるなんて最低だぞ!!」
 美っちゃんの言葉の意味を認識しようと反芻。わからない、美っちゃん。ああ、頬が痛いよ。
 美っちゃんはオレを放って女の子の所に駆け寄った。尻餅を着いてた女の子に優しい言葉を掛けてやってオレが殴った所に遠慮がちに触れてやっていた。女の子がちらりとオレを見るとさっきの甘えた顔から想像できないほどの睨みを見せた。オレは女の子が死ねばいいのにと思ったら美っちゃんが保健室へ行くことを提案して女の子と二人で消えた。
 オレは女の子が死ねばいいのにとやっぱり思った。





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