誘い

 指先に白く残る傷痕。重ねた手にも傷痕が残る。アシタバがお揃いだね、だなんてきらきらと眩しい。
 夏休みが明けて間もない日常の昼下がり。学校を抜け出して裏山へ昼食にアシタバを誘えばうれしそうに笑っちゃって、胸が痛い。木陰に腰掛けてどちらからでもなく手が重なって、軽く握る。フォークダンスで女子と手を繋ぐのはめちゃくちゃ苦手だけど不思議とアシタバとは手を繋ぎたかった。二人で日差しをっさけながら暑いね、とかアイス食べたいねとか他愛もない話を続けてぼんやりと彼方に聞こえた昼休み終了の鐘。俺が慌てて体を起こしてアシタバを見れば手を引かれた。
「ねえ、サボっちゃおうよ。」
 ああ、なんて官能的な誘惑。再び木に背を預けて誘いに乗った。繋いだ指を絡めて、指先には揃いの傷痕。同い年なのにこんなに小さいものだろうか、とその幼い手に唇を寄せた。くすぐったがるアシタバにまた胸が熱くなった。自覚。俺はたぶん、アシタバに。



090913
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