さびしいとはいわない(新平)
新妻が、入院したと吉田氏からの電話で軽くいわれた。(あ もしもし平丸くん?今週の原稿のことだけど。ちゃんと描いてるだろ?じゃあ今から取りにいくから。そうそうCROWの新妻エイジが入院したよ)
何のはなしだ。新妻が入院なんて聞いていない、そもそもそれはそんなに簡単に言って終わるもんなのか?俺は原稿どころじゃない。入院先の病院を聞き出して走った。まだ何か言おうとしてた吉田氏の声なんか聞くつもりなどなく、携帯電話の電源を切る「…ただの盲腸らしいけど…って遅かったか」
「新妻!」
「あ 平丸先生!お久しぶりです」
まっしろいベットの上で深々とあたまを下げる姿に唖然とする。まったく元気そうなのだ、顔色もいいみたいだし。
「…入院」
「ああ!3日だけでーす、漫画の方も間に合うのでだーいじょーぶですよ」
「………よかった」
へなり、体の力が抜けたのがわかった。俺がぺたんと座りこんでしまったことに新妻が焦ったのか慌てながら俺の目をみようとしてくる。キッ、と睨むように顔をあげ新妻をみると新妻は眉を下げていて首をかしげた。
「心配、させるな」
「!」
らしくないと言われたらたしかにらしくない。俺は悲観的に全てをとらえていたから、誰かの心配をして必死になったのがこれが初めてだった
「ごめんなさい。ありがとうございます」
頭を優しくなでられた。年上の頭を気安くさわるな。そう言うのも忘れて、胸をきゅっと締め付けるような甘酸っぱい感覚に堪えるために目を瞑って受け入れる。
「もう、平丸先生に心配かけないです」
「そうしてくれ」
ああ みっともない。いい大人がたかが一人のためにこんなに必死だ。いいか、新妻。俺には君が想像を超えるほど大切らしい
さびしいとはいわない
(君のいない3日間)
(つまらないな、本当に)
(失踪透子ちゃんより)
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