ばし、と目の前の金髪を叩く。
フランシスは、痛いーと言いながらも笑っている。むかつく。髭引っ張ってやろうかなあ。でもそこは我慢して、とりあえず耳たぶを引っ張ってやった。(髭が掴めるほどはないからっていうのもある)


「かわいくなる魔法って、その歳でなにいってんのよ。ばーか」
「まあまあ怒るなって」
「あんたが変なこというからでしょ」


フランシスはんー、とにんまり笑った。「知りたい?」なんて、馬鹿じゃないの。何年一緒にいると思ってんのよ。大体フランシスの言いたいことなんてわかる。下らない、掃いて捨てるほど溢れ返ってる愛の言葉。どこかで聞いたことあるようなやっすい言葉のリサイクル。なんてエコなんでしょうね!
「あれ、なんか怒ってる?」「怒ってませんー」「でも不機嫌だ」フランシスはするりと私の髪に手を伸ばした。もちろん私が触らせるはずもない。「黙れ髭」その手を掴んで捻りあげてやった。フランシスはすぐに手を引っ込めて肩を竦める。なんかむかつく。


「かわいくなる魔法、何かわかる?」
「恋をすること」
「え、嘘なんでわかったの!?」
「あんたがいいそうなことだからよ」
「そう?俺そんなロマンチストイメージ?照れちゃう」


フランシスはくすくす笑った。なんとなく読めるけど、この男には掴みどころがない。だから少し…苦手かもしれない。
だって、確かに私はフランシスの考えてることはそれとなく読めるけど、私が言ったことに対する彼の切り返しなんて予想できないのだ。カーテンが何枚も重なってるみたいで、退けたって退けたって奥は見えない。ふわふわと私に絡んでくるだけ。見えない奥では、彼はどんな姿をしているのだろう。
まあ私なんかは単純な方だからここで思考を諦めるけど、彼を愛する女の子達にしてみればたまったもんじゃないらしい。不安で仕方ないんだって、と彼は困ったように笑ってた。私に言わせれば何故それを私に言う、だけども。


「フランシスはさ、」
「ん?」
「ロマンチストっていうか…実は結構変な奴だよね」
「…ちょ、いきなり何」
「何って、そのまま。いけない?」
「いけなくはないけどさ…うん、聞き返しちゃ駄目だった?」
「いや、いけなくはないけど?」


思いついたままに口にすると、フランシスは困った顔をした。それから同じような会話を繰り広げる私たち、噴き出したのは同時だった。変なの。なんで私、こんな奴と意気投合できるのかなあ。苦手なのになあ。
テーブルの下で爪先を伸ばすと、見事にこつんと何かにあたった。「あ」フランシスが声をあげる。私が顔をあげると、フランシスとばっちり目があった。フランシスはぱちくりと瞬きをしてから、にたりと笑った。


「ぶつかっちゃったねえ」


いやなんでそんなドヤ顔なんだよ。なんか、いや、苦手っていうかちょっと、いやいやかなりむかつくかも。





100902
迷子になっちゃったw





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