名前ちゃんって、なんかぼーっとしてるよね。まあそこが晴矢にしてみれば魅力なんだろうけどさ。

ヒロトに言われた通りだ。確かに名前は、ぽわんというかなんとも間の抜けた効果音が似合う。現在進行形で隣にいる名前は、真剣に爪先を眺めていた。公園のベンチに男女ふたり、でも片方は革靴をガン見していてもう片方は携帯をいじくりまわしている。奇妙な光景なんだろうな、きっと。


「名前」
「…ん?」
「何見てんだ?」
「…何見てるんだろ。なんも考えてなかったや」


へへ、と笑う名前。変わり者。その通りだ、だけどこいつの周りにはいつもぱらぱらと人がいる。なんというか、動物的な存在で。こう、癒される、らしい。わからなくもないが、さすがにちょっと恋人としては複雑な心境。
あ、晴矢くん!名前にしては珍しい大きな声。それから、スケジュール帳を取り出して、ぱらぱらと今日の日付の部分を開く。そこには赤いペンで何か書いてあった。


「晴矢くん、今日はもう帰ろう」
「なんで?」
「なんでも。帰ろうよ」
「せっかく部活ねーんだから、ゆっくりしてこうぜ」
「だーめ」
「クレープおごってやろうか?」
「んーん、大丈夫だよ」
「とにかく、まだ帰らねえぞ」
「駄目だよ晴矢くん、あたし帰っちゃうからね。ほらほら」
「なんか用事いれてんのか?前から言ってただろ、今日は部活ないって」
「ちがうよ、あたしは暇」
「なら」
「でも晴矢くん、明日は午後授業ないんだよ?全部部活。最近疲れてるし、でも先週末デート連れてってくれたし、今日休まないと明日以降つらいんじゃない?」
「…あ」
「って、手帳に書いてあった」


彼女の手帳の赤いペンは、すべて俺関連のことが書いてある。ぽわんとした雰囲気をまとわせて、名前は俺の手を引っ張った。犬みたいだ。俺、飼い主。散歩いきたいみたいな?
今日いくの公園がいいって言ったのも、きっと気使ってくれたんだろうなあ。ヒロトは知らないんだろう、こいつがこんなに気を使えるってこと。横に並んでやると、名前は手を繋いできた。うれしそうに笑っている。くそ忙しい部活とは正反対なこの感じ。ちょっとぼーっとしてるくらいが、こいつと俺にはちょうどいいんじゃねーの。





100926
何書きたかったかわからないよう





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