「神威くん、おはよう」



びっくりしたように青い目をまるくしてから、神威くんはにっこりと笑った。



「おはよう名字さん」

「わたしSじゃない」

「…お?」

「だから、Sじゃない」

「だって昨日のは放置プレイじゃないんですか?」

「ちがう!敬語もやめる!」



ばんと机を叩く。神威くんはまた青い目でわたしをまじまじと見た。ちょっとだけ怯みそうになるけど、負けない。
晋ちゃんいわく、神威くんは前の学校を喧嘩でやめることになったらしい。そんな人と友達で、うちの学校の番長と幼なじみなんて、昨日一晩クラスメイトともう話すことはないんだろうなって一人お別れ会もしてきた。
覚悟はつまり、決めた。



「神威くん」

「なんですか?」

「SとかMとか関係なく、お友達になりましょう」

「え?」

「わたしあなたとなら友達になれると思う」



そういうわたしから平穏や平和を奪う人とは、なぜかなかよくなりやすいからね。
でも神威くんはにっこり笑って、あのはりつけたような笑顔なのに少し違う感じの顔で、うれしそうに。…あれ。首を横に、振った。



「い、いやだった?」

「うん」

「え」

「友達じゃなくて、恋人がいいな」



君みたいなひと、すきだな。

…やっぱりわたしから平穏平和を奪う人には好かれやすいようです。にっこり笑う神威くんの向こうに、半笑いのクラスメイトたちが見えてしにたくなった。





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