「欝陶しい」
眉間にしわを寄せた幼なじみは、吐き捨てるようにそう言った。
しかし晋ちゃんのいうこともわかる。平穏平和に暮らしたいがために、晋ちゃんをスルーしたことは数知れず。いやまあ喧嘩なうとかメールされて反応できるやつがいるのかってね。うん。
「薄情者め」
「言われたかねーんだよテメェにはよォ」
「いやでもこの間がるぼあげたじゃん」
「もう消化した」
「消化したら終わりなのかお前は。あげた事実は変わりません!!」
晋ちゃんは不機嫌そうにわたしを見た。目つき悪いなもう。
「お前、俺と関わりたくないんだろ」
「学校ではね」
「うぜェ。じゃあくんな」
じっと睨んできた晋ちゃんは、飽きたのかふああとちょっとかわいいあくびをして、廊下に出た。わたしもあとを追う。
「避けてんのか、あいつ」
「…や、あの、」
「まあいいんじゃねェか?いていないようなもんなんだろ、お前がほっとけば」
晋ちゃんがたるそうにあごでさした先には、一人で黒板をまっすぐ見ている後ろ姿。休み時間なのに授業と変わらないのとか、やっぱりぽつんと浮いて見えて。
平穏平和に暮らしたい。そのためには晋ちゃんにも、神威くんにも関わらないのが一番なのに。困ると頼ってしまうし、ほっとけないし、結局わたしはかしこく生きるのに向いてないらしい。
110925