べつに嫌いではない。神威くんのこと。厄介な幼なじみもいるし、そいつもどうしようもない不良だし、怖くもない。いざとなったら絶対敵は討ってくれる…といいな。うん無理かも。
「そいつか、神威ってのは」
「うん」
「喧嘩強いんだってなァ?」
「晋ちゃん顔怖いってばクラスメイトがもうだいぶ遠いところに」
「うっせえ馬鹿」
容赦なくぶっ叩かれた頭が痛い。ほんとにこいつ手加減知らないよな。神威くんは相変わらずにこにこしている。
「晋ちゃん叩くのやめてってば脳細胞死んじゃうから」
「あーもう黙れって」
「うりゃっ」
神威くんが晋ちゃんの手を掴んだ。すっと晋ちゃんの目が鋭くなって、あの喧嘩する前みたいな目になる。やばい。逃げようと、椅子から立ち上がった瞬間。
晋ちゃんが吹っ飛んだ。
「…は?」
「名字さん、Sなんですよね?」
「……やっあのべつに、」
「おれ、耐えるから。すきにしてください」
晋ちゃん一撃って、どんだけ強いの…!しかしそんな本人はにこにこ笑って、自分のほほをきゅうとひっぱっている。
べつに嫌いじゃない。晋ちゃんは好きなくらいだ。だけど、少し遠い位置からあいまいに微笑みかけてくるクラスメイトを見ると、できるだけ関わりたくないなあと思ってしまうのも本音ではある。
110925