「久しぶり、ヒロト」



違う高校に進んだせいで、バタバタしててなかなか会えなかった。けど久しぶりに会って思うことは、やっぱり大好きだっていうこと。
ヒロトは柔らかく笑って、久しぶり、と同じように返してくれた。電話越しじゃないその声に嬉しくなって笑うと、ヒロトはぱっと私の手をとった。



「わ」

「借りていいかな?左手」

「私ごとじゃなきゃやだよ?」

「当たり前だよ」



くすくす笑うヒロト。胸の奥の方からむずむず来て、うれしすぎてどうにかなってしまいそう。この一ヶ月、ずっとずっと悩んでて、会いたかったりとか触れたかったりとかそういうのずっと押し殺して、切なさとか苦しさで圧迫されてたはずの心臓が、きゅんと呆気なくやさしい音を立てる。こいつ、私以上にヒロトが好きなのかもしれない。いやでも絶対私の方が好きだ。
そんなことを考えていると、ヒロトの指が私の前髪を撫でた。びっくりして見上げると、少し切ったんだねなんて言われる。あ、またきゅんって音。



「でもそれ以外何も変わらないね」

「当たり前だよ、一ヶ月だもん」

「そうだね。慣れた?学校」

「まあ、一応。」

「俺がいなくて寂しい?」

「…自分で言う?」

「あはは、意地悪してごめん」



ヒロトは何にも変わらない。私だってそうだ、昨日ヒロトとデートだからってちょっと張り切って前髪切っただけ。
と、ヒロトが鞄から何かを取り出した。「寂しかった名前にプレゼント」え、というと目つむってね、なんて笑顔で返されてあわててつむる。ヒロトの少しひやっこい指先が私の首筋をかすめて、首の後ろで何かしている。これって、もしかしなくても。



「わ…!!!」



いいよ、って言われるのと同時に目を開けて首の後ろから辿るように指先を走らせる。チェーン。ね、ネックレスだ。長めのチェーンを辿り終わってヘッドに触れる。
見ると、シンプルなデザインのリング。
ぱっと弾かれたように顔をあげると、ヒロトもシャツの下からチェーンを出したところで、先には私と同じリング。私は何も言えなくて、魚みたいに口をはくはくさせるだけ。ヒロトは照れ臭そうに笑って、チェーンの先のリングを揺らす。



「ペアリング。チェーン長めにしておいたから、これなら制服の下でもつけられるよ。…気に入った?」

「うん!!ありがとう!」

「よかった。キザすぎるって晴矢たちに言われてさ」

「キザ?」

「これでいつでも名前と一緒だよ、ってこと」



言い終わるか終わらないかで、私の顔が一気に赤くなる。ヒロトもちょっと赤くて、やっぱりキザかななんて困ったように笑うから、あわてて首を横に振った。キザなんかじゃないよ、すごくうれしいよ。そう伝わるように。通じたのか、ヒロトはありがとうとうれしそうに笑った。
手を離すとちょうど心臓の上あたりにことんと落ちたリング。どきどきしてる。これで少しは落ち着いてくれるといいんだけどなあ、こんなのもらったら悩む必要ないし。

じゃあ行こうか、と歩き出すヒロトに今度こそ私から指を絡める。ヒロトはうれしそうに笑った。





110508
二万打記念。
あかしさんリク。




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