バラバラバラバラッ
音にすると非常にわかりづらいけれど、まあ簡単に率直に小学生にだってわかるようにいうと、どこぞの映画よろしく銃をぶっ放された。
…は?
ぱちくりと瞬きをして、私がよりかかっていた木を見る。たくさんの細かい穴。硝煙と木の焼けた香りが漂ってきて、思わず口元が引き攣った。目の前でのんきに「どうしたー?」なんて言ってくる河童に、後は「自分で扇いでください!」とうちわを押しつけて川の方へ追いやる。それから振り返ると、
「…気にするな」
「何を」
「銃の調整をしていただけだ。暑がっていたんだろう、そのまま扇いであげてくれ」
何でもなさそうな顔でさらりと告げるシスター。
…木をもう一度見ると、確かに銃痕がある。私がいた、10センチ横ぐらい。ふうむ。調整に、こんな、わざわざ人のいるところに撃ち込む必要があるのだろうか。うん、無いな。
つまり彼が何らかの理由を持ってここに打ち込んだのは明白な事であり、そんな彼がアホっぽい言い訳らしきもの(だって妙に堂々としてて断言できない)をしたという事は何か隠したいことがあるんだろう。
…まあ大体検討はついているわけですが。
「あのさあ、当たったらどうするの!」
「当たらん」
「百パーセントなんてないありません」
「名前に当てる訳がなかろう」
とりあえず文句を言うと、オッソロシイ台詞が返ってきた。さらりと言えてしまうあたりほんと怖い。そんなシスターはのそのそと私に近づいてきて、じっと私を見下ろした。
だから私も彼を見上げて、しかし悲しいことに首が疲れるくらいに身長差があるから、ぐいと袖を引いて視線を合わせてもらう。
「シスターが村長に恩があるっていうから、私もできる限りの事はしようとしたわけですが」
「…」
僅かに視線を逸らすシスターが、あまりに思い通りの反応で思わず笑えた。普段わかりづらいから愛されてない気がするけど、シスターはシスターなりにちゃんと人並みに、私がマリアと並ぶシスターに感じるみたいに、ヤキモチをやいてくれているらしい。
ヤキモチ?なんて言うとシスターは何を話し掛けても終始無言の状態になってしまいそうで、どうしようかなあなんて考える。と、急にシスターが私に視線を戻した。びっくりして見返すと、シスターはとても珍しくちょっと笑った。
「つまり、私の為だったということか」
え、何そのカウンター。
ばっと頬を押さえた時にはもう遅くて、私の赤い顔を見れて満足したらしいシスターはなんだかご機嫌なようだった。
110507
二万打記念。
苓白さんリク。